※第１６話 side：降谷 ページ17
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「そういえば名前は？」
問いかけられて。
まだ名乗っていないことに気が付いた。
銃創や腹の青痣を見られている彼に通用するとは思えない、が。
知られるわけにもいかない。
ならばー・・・
僕の伝える内容は決まっている。
「安室透です。喫茶ポアロでアルバイトをしてます」
「俺は雪成A。小学校で非常勤校医をしてる。ところでさ・・・」
予想外の至近距離。
早鐘を打つ胸の鼓動。
見透かすようにじっと見つめられて息が詰まりそうになった。
医療系の学校に通っていたなら知識も申し分ないはず。
やはり無理があっただろうか。
怪我の度合いだけみれば警察沙汰になってもおかしくはない状況。
ただの喫茶店のアルバイトが何をどうしたらこんな怪我をするというのか。
嫌な汗が額を伝う。
何も言わず黙っていると雪成が意地の悪い笑みを浮かべた。
「安室さんって歳いくつ？」
「・・・はい？」
予想していたものと真逆な質問に呆気に取られた。
「歳だよ、歳。見た感じ俺より」
「29歳ですよ」
「・・・は？」
見開かれた黒目がちの瞳が真っ直ぐ僕を見据える。
「この歳でアルバイトなんて恥ずかしいですよね」
「いやいやいや。何処をどう見ても下にしか見えねぇ」
嘘だろ、と漏らす彼に片頬を上げた。
「よく言われますよ'童顔'だって。雪成さんは？」
「28歳。・・・なぁ、今更だけど敬語にするべき？」
その判断を僕に委ねるのか。
見たところ。
彼の'素'は此方なのだろう。
気付いてしまった以上。
敬語で話されるのは僕としても引っ掛かるものがある。
「そのままで構いませんよ。僕は気にしませんから」
「なら良かった」
嬉しそうに目を細める雪成の姿に自然と口許が緩んだ。
「そうだ。腹、減ってない？朝飯あるんだけど」
言われてみれば。
昨日の夜から何も食べていない。
・・・ぐぅ。
意識した途端。
幸い雪成には聞こえなかったようだが腹の虫が騒ぎ始めた。
開かれた扉の先からは消毒液とは違う美味しそうな匂いが鼻を擽る。
「折角なので頂いても？」
「じゃあ温め直してくる」
足早に台所へ向かう背中。
怪我について何も聞かないでくれたのは彼の優しさなのだろう。
「・・・ありがとう」
その数分後ー・・・
雪成が持ってきた和風出汁の豆乳粥は。
予想以上に絶品だった。
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鐘稀(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます！引き続き楽しんでもらえるよう亀更新ですが頑張りますね！ (2020年4月1日 7時) (
レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くれは - 頑張って！続き出来たら飛んできます！w (2020年3月30日 20時) (レス) id: 2bfb99dd96 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - くるすけさん» コメントありがとうございます！はい！ちょっとずつですが更新頑張ります！ありがとうございました！ (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けたなら幸いです！とてつもなく亀で申し訳ないですが生ぬるい目で見守ってやってください(笑)ありがとうございました！ (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くるすけ - 面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年2月24日 14時) (レス) id: 022b55326f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：撞稀 | 作成日時：2020年2月11日 21時
