※第15話 side:降谷 ページ16
×
射し込んだ光の眩しさと部屋に充満する鼻を突くような臭いに眉根を寄せた。
・・・消毒液、か?
薄っすらと開いた瞼の先に広がるのは真っ白な天井。
'見慣れている'
そう思うのに。
自分の部屋ではないという確信。
・・・あぁ、そういうことか。
マンションの住人に拾われたのだ、と結論に辿り着いた。
「あれ?起きたのか」
無遠慮に開かれた扉。
視線を向ければ青年の真っ直ぐな瞳と視線が絡んだ。
礼を言おうと身体を起こそうと腕に力を入れる、が。
伸びてきた腕に止められた。
「・・・あ、の?」
「酷い怪我してんだから無理するな」
青年に言われて自分の身体に視線を落とした。
蹴り飛ばされた脇腹。
銃弾の掠めた腕。
その両方に。
丁寧に包帯が巻かれている。
それ以外にも。
身体のあちこちに付いた細かな傷には適切な処置が施されていた。
「すみません。ご迷惑をお掛けしたみたいで」
「・・・そう思うなら。俺が'良い'と言うまで大人しくしてろ」
溜め息混じりに溢して彼はベッドの端に腰を下ろした。
「・・・腕」
出せ、と訴える眼差し。
差し出せば傷に響かないようゆっくりと外されていく包帯。
失敗、したわけではない。
いつも通りに任務を遂行した、とそれだけは自信を持って言える。
ただー・・・
組んだ相手が悪かった。
よりによって組織の中でも冷酷非道で名の通る'ジン'
区別がなく。
使えるものは何でも使う主義の男。
簡単に言えば。
・・・使われたのだ、'囮'に。
背後からジンに撃たれ。
その拍子に取り押さえていた対象からは蹴りをもらい散々だった。
自宅の玄関先に辿り着いたまでは覚えている、が。
その先の記憶がない。
目の前の彼が居なければ今頃どうなっていたのだろうか。
正直、考えたくもない。
ちらり、と包帯を巻き直す青年を盗み見る。
長い睫毛と黒目がちの瞳。
輪郭の整った中性的な顔立ち。
思わず見惚れてしまった。
「・・・何?」
気付いた彼のジト目と視線が絡んだ。
「っ、いや。随分と手際が良いなと思って。見入ってしまいました」
「一応、医療系の学校に通ってたから。これくらいは、な」
白く長い指が茶褐色の肌を滑る。
出来た、と満足そうに笑う彼に胸の鼓動が煩いくらいに音を立てた。
×
307人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鐘稀(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます!引き続き楽しんでもらえるよう亀更新ですが頑張りますね! (2020年4月1日 7時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くれは - 頑張って!続き出来たら飛んできます!w (2020年3月30日 20時) (レス) id: 2bfb99dd96 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - くるすけさん» コメントありがとうございます!はい!ちょっとずつですが更新頑張ります!ありがとうございました! (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けたなら幸いです!とてつもなく亀で申し訳ないですが生ぬるい目で見守ってやってください(笑)ありがとうございました! (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くるすけ - 面白かったです!更新頑張ってください! (2020年2月24日 14時) (レス) id: 022b55326f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:撞稀 | 作成日時:2020年2月11日 21時