※第8話 side:コナン ページ10
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博士の奢りでコロンボに来ていた、俺、元太、光彦、歩美ちゃん、そして灰原。
扉を開け、席を探しているときにそれは起こった。
「っ、博士!!」
背後から突進したように博士を押し退けた二人組の男。
その手にはそれぞれ、果物ナイフと小型の銃が握られていた。
銃を握り締めた長身の男はそのままの勢いで厨房に駆け込み、残った無精髭の中年男は押し退けた博士の傍で店内を見渡していた。
「博士!!大丈夫!?」
「止せ、灰原!!」
博士に駆け寄った灰原は案の定、果物ナイフを持った無精髭の男に抱えられてしまった。
「灰原さん!!」
「哀ちゃん!!」
「この野郎!!灰原を離せ!!」
「止めろ!!お前ら!!」
元太達が必死で灰原を呼ぶ。
今にも飛び出しそうになるコイツらの前に立ち男を睨み付けた、瞬間。
カラン、カランーー
店内の騒々しさとは似つかわしくない軽快な音を出して入ってきたのは、灰色のコートを身に纏った、いかにも怪しげな男。
フードを目深に被り、黒のゴーグルをしている為、素顔はいまいち分からない。
'他にも仲間が?'
一瞬、過った可能性。
しかしそれは直ぐに打ち砕かれた。
僅かに首を傾げた後、彼は周囲を探るようにその場に佇んだまま。
「何だ!?お前!!」
灰原を抱えたまま叫ぶ無精髭の男の様子から見ても彼は紛れもなく'白'だ。
そう思った矢先ーー
「・・・宮野、志保?」
ポツリ、と呟かれた名前に、勢いよく彼を見上げた。
その視線の先は抱えられた灰原を捉えているようにも見える。
灰原の本名を知っているのは、俺と博士以外には黒の組織のみ。
'まさか奴等の仲間なのか?'
ギリッ、と唇を噛み締め、彼の挙動を逃さないようにじっと見つめる。
いやな汗が掌を濡らす。
もし彼が組織の人間なら、このチャンスを逃す訳にはいかない。
組織の人間だと仮定して灰原の正体を知ってしまったのなら、簡単に奴等の所へ帰すわけにもいかない。
ここは一か八か。
賭けるしかない、と思い切って彼の灰色の外套の裾を引いた。
黒のゴーグルが下を向き、俺の姿を捉える。
口角を吊り上げる彼の異様な雰囲気に、心臓が一際大きな音を立てた。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時