※第5話 side:降谷 ページ7
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諸伏景光が死んだ。
しかし公安の降谷零に感傷に浸る時間など一切与えられなかった。
風見に連絡をつけたあと、自らもヒロの自宅へ向かう。自前のRX-7に乗り込み、法定速度ギリギリでアクセルを踏み込んだ。
Pirrr.....
ふと鳴り響いた着信音に視線を落とせば画面には『風見』の文字。
いやな焦燥感に駆り立てられる。
どくん、どくん、と打ちつける胸の鼓動。
通話ボタンを押し、スピーカーに切り替える。
「どうかしたか?風見」
「大変です!降谷さん」
焦りを含んだ風見の声音と周囲で入り乱れる「急げ!」「解析まだか!」等の悲鳴にも近い怒声。
察するに、パソコンにウィルスが仕掛けられ打つ手がない、という状況か。
チッ、と思わず舌打ちが漏れる。
すぐに向かう、とだけ告げて通話を切ると、更にアクセルを踏み込んだ。
5分後ーー
駐車場に愛車を停め、駆け足で室内に飛び込んだ。
「降谷、さん」
肩を落とし、落胆の色を見せる風見。
中央に置かれたパソコンの画面は何を映すこともなく青白い光を放つのみ。
「・・・状況は?説明しろ、風見」
射ぬくような鋭い眼差しを向ければ、風見は背筋を伸ばし、眼鏡のブリッジを指で押し上げた。
「パソコンを起動させた瞬間、ウィルスが拡散。食い止めようとあらゆる手を尽くしたのですが・・・」
言い辛そうに眉根を寄せ、視線をさまよわせる。
「間に合わず、データが全て消失した、と」
呆れ返ったように言葉尻をとれば、風見の喉仏が上下した。
「っ、消失したデータの復元は難しく、また痕跡が何一つ残されていない為、ウィルスを送り込んだ者の特定も困難を極める状況です」
「相当、腕の立つハッカーの仕業のようだな」
一気に捲し立てた風見を他所に思考を巡らせる。
こんなやり方、組織内で出来る奴は居ない。
一体、誰が?
とにかく、その人物が組織の目に留まれば、脅威になることは間違いない。
「一刻も早く、探しだすんだ」
どこの誰よりも早く、我々が。
たとえどんな違法な手段に手を染めようとも、ヒロが命懸けで掴んだデータは全て、回収してみせる。
そう胸に誓った。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時