※第47話 ページ49
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ホテルの最上階。
スイートルームの一室。
長い脚を組み、優雅にワインを口にするベルモットの隣で、ハッキングした例の動画を剥き出しの紅い瞳で眺めていた。
動画は小五郎さんのパソコンに送られてきていた。アドレスを辿ると、送り主は少年探偵団の一人、光彦だった。
ウェーブがかったブロンズ色の髪。
鋭さを持った瞳。
動画に映る人物は、何処をどう見てもシェリーこと宮野志保だった。
何かの間違いであってほしかった。
気付かれないように息を吐き出す。
「・・・加工された形跡はない。まず本人に間違いないだろうな」
気になるのは、俺よりも前にハッキングした奴の痕跡が残されていること。
ーーわざと、か?
「ふふ、これでやっと手が出せるわ」
ベルモットは満面の笑みを浮かべた。
ーーやっと?
どういう意味だ?
彼女の生死が分からない状態で、'やっと'という言葉には違和感が残る。
・・・まさか。
ベルモットは最初から彼女が生きていることを知っていた?
もしかして、幼児化してることもーー
「駄目よ、ブラッディ」
耳に当たる生温い吐息。
真横には妖艶な笑みを浮かべたベルモット。
彼女の長い指が頬を撫でていた。
「それ以上踏み込んだら、戻れなくなるわよ」
「・・・なら最初から俺を巻き込むな」
知りたがるのは情報屋の性。
駄目だ、と言われても好奇心は抑えられない。
「組織に入るなら、教えてあげるのに」
安くみられたもんだな、俺も。
口振りからして本気じゃないようだけど。
組織に入れば、無理矢理にでも情報を搾り取られる。得られなくなれば、使い捨ての駒にされるだけだ。
「不利になると分かってて、組織に入る必要があるのか?」
挑発するように笑う。
つまらない、と言いたげにベルモットは肩を竦めた。
コン、コンーー
まるでタイミングを見計らっていたかのように入ってきたのは、バーボンの仮面を被った彼だった。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時