検索窓
今日:15 hit、昨日:10 hit、合計:190,594 hit

※第45話 ページ47

×



'感傷に浸っている暇はない'



赤井にそう忠告されてたのに。



黒目が落ちそうなほど、安室さんの瞳は大きく見開かれている。

その瞳の中。
今にも泣き出しそうな、顔を歪める俺の姿が映っていた。



'組織と繋がってる情報屋'



与えるのは、そこまでだった筈なのに。
勘の良い目の前の男は気付いただろう。



景光と繋がりがある、と。



溢れそうになる涙を必死に耐えるように、唇を噛み締めた。



彼のことになると歯止めが効かないのは、彼の死を防げなかった自責の念。

彼の一方的な約束を果たそうとするのは、せめてもの償い。自己満足。



楽になりたかった?

景光のことで互いの傷の舐め合いをしたかった?

お前の所為じゃない、と言ってほしかった?







あぁ、そうか。
受け止めてくれる、と期待したんだ。







視線を上げれば、安室さんが辛そうに眉根を寄せていた。



・・・駄目だなぁ。
自分の弱さに反吐が出る。



張り詰めた空気に耐えきれなくて、珈琲を飲み干した。

「・・・帰ります」

「っ、待て」

立ち上がり様、腕を掴まれた。あまりの力強さに腕が軋んだ音を立てる。



こういうとき、痛みを感じれたらな、と思う。



そうすれば彼の俺に対する憤りを、肌を通して感じることが出来るのに。



「まだ話は」

「終わりましたよ」

「っ、」

冷たく低い声音で告げる。
安室さんの表情が強張り、喉が上下に動いた。



「・・・これ以上、貴方に話すことは何もない」



離してください、と声を固くして言うが離してくれそうにない。真っ直ぐ見つめる安室さんの瞳が、戸惑いに揺れていた。



「このまま行方を眩ます、なんて事しないですよね?」



景光との約束がある。
貴方を景光の代わりに裏でも表でも支える、と。

その縛りがある限りーー



「俺はまだ、此処にいます」



約束を果たす日まで。



安心したのか、安室さんの表情が和らいだのが分かった。俺も負けじと挑発するような笑みを浮かべる。

「これ以上はボロが出そうだから、帰ります」

「本当に、君は。・・・いや、何でもない」



呆れたような声音。
腕を掴む手の力が緩んだ。



「それじゃあ、また」

「今度はポアロでお待ちしてます」



この日の夜中、再び彼と会うことになるとは、全くの予想外だった。



×

※第46話→←※第44話 side:降谷



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
167人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。