※第３８話 探偵たちの夜想曲 ページ40
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「悪いけど、蘭さんと小五郎さんは連れていけない」
「っ、どうして」
死 体が出たなら現場保存が第一優先。
警察に事情を話すなら信頼の厚い小五郎さんが適任。
なによりーー
「蘭さんをこれ以上、危険な目に合わせるわけにはいかない」
「・・・でも」
「樫塚さんの車なら分かってる。タブレットで追跡も可能」
「だったら、私たちも」
縋るような蘭さんの声音に、俺は首を横に振った。
「運転手は安室さん。あとはタブレットでナビが出来る俺が居れば充分」
樫塚さんが此処に戻ってくる可能性だって、ゼロじゃない。
「だから、俺達に任せてほしい」
真剣な眼差しを向ける。
言い聞かせるような声音で言えば、納得してくれたのか蘭さんは小さく頷いた。
「こっちは任せろ。小僧を頼む」
蘭さんの肩に手を置き、小五郎さんはしっかりと体を支える。
「任せてください」
安心させるように微笑んだ。
夜の街路を走行する白のRX。
助手席で俺はタブレットを眺めていた。
サイドミラーに映り込むバイク。
俺達の後を付いてきてるようだった。
「・・・後ろのバイク、安室さんの知り合いですか？」
「いえ。その言い方だと高崎さんの知り合いでも無いみたいですね」
となると蘭さんが電話で話していた'世良'って子か、樫塚さんの知り合いか。
「・・・どうして蘭さんを置いていったんです？」
思考を巡らせる俺に降ってきたのは、安室さんの疑問の声。
「さっき言った通り。蘭さんは女の子ですから、危険な追跡は遠慮してもらったまでです」
「それだけが理由では無いはずです」
内側を探るような瞳。
嫌いじゃない。
はぁ、と息を吐き出した。
「・・・これ以上エンジェルを巻き込むと、俺の身が危険なんですよ」
とだけ言っておこう。
にっこり笑いかければ、安室さんの瞳が僅かに揺れた。
「っ、やはり君は」
「その話は今度。・・・反対車線。来ますよ、青いスイフト」
すれ違い様、安室さんは急ブレーキをかけ反対車線へ滑り込んだ。
その後ろをぴったり付いてくるバイク。
前方に見えたのは目的の車ではなく、赤いマスタングだったーー
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作者名：鐘稀 | 作成日時：2019年11月2日 21時
