※第36話 探偵たちの夜想曲 ページ38
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十分待っても樫塚さんから声がかかる様子はない。それどころか、コナンの姿も見当たらない。
ーーアイツ。
まさか、樫塚さんに付いて行ったのか?
チッ、と舌打ちが漏れた。
Pirrr......
鳴ったのは俺のスマホ。
外套のポケットから取り出し画面を確認する。
'ベルモット'
表示された名前に、肩を竦めた。
「ちょっと外に出るんで、何かあったら教えてください」
「・・・くれぐれも逃げようなんて思わないでくださいね」
射抜くような鋭い眼差し。
逃げませんよ、と片頬を上げ外へ出た。
Pirrr.......
鳴り続けるスマホ。
余程の緊急事態なのか。
小さく息を吐き出し、仕方なく通話ボタンを押した。
「何か用?ベルモット」
「あら、つれないわね。出るのも随分遅かったじゃない」
「ちょっと立て込んでてね。それで、何?」
用があるんだろ、と暗に示す。
話ながらも俺の足は着実に駐車場へ向かっていた。
「ニュースを見たの。エンジェルとシルバーブレットは無事?」
何で一緒に居るって知ってるんだ?
まさか安室さんに盗聴器でも付けてるのか?
「あまり勘繰らない方が良いわよ。貴方の為にも、ね」
遠ざけるような低い声音。
俺としても、利用価値のある彼女の機嫌を損ねるのは得策じゃない。
「・・・彼女は無事だ。ただ、彼の方は自分から犯人に付いて行ったみたいでね」
ごくり、とベルモットが息を呑んだ。
そんなに大事なのか。
あのシルバーブレットが。
珍しく動揺を窺わせる彼女に、新しい玩具を見付けたような感覚に襲われる。
少し調べてみる価値はありそうだな。
一体、彼等の間に何があったのか。
「心配しなくても、必ず無事に助ける」
「・・・本当ね?」
「嘘は言わない」
まだコナンに退場してもらう訳にはいかないんでね。
「バーボンに気付いてるんでしょう?上手く彼と協力することね」
「・・・了解」
それじゃあ、とベルモットとの通話を終えた。
辿り着いた駐車場。
車が一台消えていたーー
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時