※第35話 探偵たちの夜想曲 ページ37
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部屋の前まで来たが、安室さんの言う怪しい人物なんて居るわけがなかった。
此処に来た本来の目的。
さぁ、どうやって部屋に入る?
「あ〜っ!!トイレに行くの忘れてたァ〜!!もれちゃうよォ〜!!」
突然コナンが特有の高い声音で叫んだ。
下半身を捩り、足をバタつかせる。
子供ならではの手荒い手段。
コナンにせがまれ樫塚さんが扉を開くと、異臭が鼻を突いた。
その臭いに思わず顔をしかめる。
ーーこの臭い。
まさか、死 臭?
気付いたらしく、コナンも表情を強張らせていた。表情は変わらないが、恐らく安室さんも気付いただろう。
玄関に入れば、小五郎さんと安室さんもコナンに続く。
蘭さんに確認すると、コロンボからずっとトイレに入れてなかったようだ。
小五郎さんは本当だとして、安室さんは単なる口実だろうな。
結局、全員で寄っていくことになった。
テーブルに散乱する空き缶と食べ残し。
樫塚さんの話では、昨日は大学時代の友人と宴会していたそう。
にしては汚れすぎてる。
女性の部屋というよりは男の部屋みたいな汚れ方だ。
それにーー
兄を失くしたばかりで、宴会する気になるものなのか?
ここが本当に'彼女の部屋'なら、その精神は実に興味深い。
『本日午後四時頃ーー』
テレビから流れる音声。
デカデカと画面に映る『毛利探偵事務所』の文字。
もうニュースになってるのか。
慌てた蘭さんが携帯の電源を入れると、途端に鳴り出した。
「せ、世良さん!?」
何を話しているか聞こえないが、どうやら思っていた人物とは違う人からの連絡だったようだ。
「あ、ゴメン・・・何か声が途切れてて聞き取りづらいみたい」
電波妨害。
ってことは、盗聴器か。
「ちょっと悪い」
一応の断りを入れて、世良という人との通話を切った。
「え?」
俺の行動に驚いた蘭さんの瞳が揺れる。
「もしかしたら、この部屋・・・盗聴されているかも」
助け船を出したのは安室さん。その手には受信機が握られていた。
「えぇ!?」
蘭さんと樫塚さんが同時に叫ぶ。
「今から全室を回って盗聴器の設置場所をつきとめますけど、構いませんよね?」
安室さんが尋ねると「下着を片付けるから五分待ってください」と樫塚さんは慌てて室内を出た。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時