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ある日ふらっと立ち寄ったパン屋に、いつぞや見た幸せそうな夫婦がいた
『あ……ここが……』
「いらっしゃい。なにかお探しかしら?」
白い肌に優しい目元は禰豆子ちゃんそっくり
後ろにいる男の人も、髪と目元は炭治郎そっくり
『噂には聞いていたんですが、初めて来たもので。おすすめをいただきたくて』
「そうね……」
それからたくさんのパンを教えて貰って、ギンと累達の分も合わせて山ほど買い込んだ
「沢山買ってくれてありがとう」
『いえいえ。私の家族たちにも分けてあげたいので』
「そうか。ん?……君、まさか…」
炭治郎のお父さんに声をかけられ、見上げるとなにか驚いたような顔をした
『あ、やば。そろそろ帰んないとギンに怒られる!じゃ、また来ます!炭治郎と禰豆子ちゃんによろしく!』
時計を見て慌てて店を出て、鬼化して翼で勢いをつけて飛びながら瞬歩も駆使して爆速で家へ向かった…
「炭治郎と禰豆子のお友達かしら…お名前聞いとけばよかったわ」
「あの子は鬼の子だ。昔話を知っているだろう?」
「ええ。かつては人間を食べては悪事を生してた、っていう」
「そう。今は人を護ってくれる神様だ」
「えぇ!?そんな子には見えなかったわ…」
「気配が人間と少し違ったからな……でも、鬼というのはなんとも可愛らしいものだな」
「人間と変わりない姿でしたしね」
「あの子は龍の鬼…だね。家族って言っていたから、蜘蛛鬼の兄弟や雷の鬼、蛇の鬼もいるんだろね」
「うちのように大家族なのね」
「龍の鬼と蛇の鬼は番だ。それ以外の3人は龍の鬼が人間だった頃に拾ったって伝説だ」
「ふふっ、そうなのね。また来てくれるかしら」
「来てくれるさ」
寄り添う夫婦はどこまでも青く続く空を眺めた
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作者名:切人(スランプ中…) | 作成日時:2021年8月16日 8時