Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ10)

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Episode38 -10 ページ10

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どことなく、迷子になった子供みたいにも見える。

「……俺が、間違ってたの？」

「ちがう……俺が、何も言わなかったのがいけなかった」

二宮さんにとっては翔さんが生きる意味だったのかもしれないと私は思う。

震える声で問いかける二宮さんは、怒られるのを怖がる子供みたいにも見えた。

たぶん私にはわからない。

そこには、翔さんと二宮さん、長年支え合ってきた二人にしかわからない何かがあるのだろう。

「ねぇ、カズ」

「なに、翔ちゃん」

「謝れなんて言わない。Aのことを認めろとも言わない。だから……明後日、退院のために車で迎えに来てくれる？」

「！」

甘えるように問いかける翔さんに二宮さんがハッとしたように顔を上げた。

その目に、見る見るうちに水分がたまっていく。

透明なそれが零れ落ちる前に、二宮さんはくるりと背を向けた。

「しょうがないな。翔ちゃんは世間知らずだから、俺がいないと何もできないもんね」

「……そんな言い方ないだろ」

拗ねたように翔さんが言うと、張り詰めていた部屋の空気がようやく緩むのが分かった。

背を向けていてわからないけど手で顔のあたりをこすった二宮さんがこちらを振り向く。

その目が、私をとらえた。

「俺は運転係だから。ちゃんと翔ちゃんの荷物まとめるの手伝って上げなよ、Aちゃん」

「っ、はい！」

元気にうなずいた私に二宮さんが小さく笑う。

そして、転がったナイフをキッチンへ置くとひらひらと手を振った。

「邪魔者は一度退散するよ。また明後日にね、翔ちゃん、Aちゃん」

慣れない呼び方でそう言って二宮さんの姿が扉の向こうに消える。

どちらともなく顔を見合わせた私たちは、同時に気の抜けた笑顔を浮かべた。

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