Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ9)

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Episode38 -9 ページ9

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「A」

「はい」

「俺が好き？」

「っ、……好きです」

伝わるように。

ただ、壊れかけたあなたの心へ。

「そっか」

翔さんの口元に笑みが浮かぶ。

揺れていたその目が、徐々に焦点を取り戻していた。

「翔ちゃん、女の言うことなんて信じるの？俺以外を信じちゃだめだよ。俺がずっと翔ちゃんを守ってきたんだから」

「……ちがう」

「…、翔ちゃん？」

焦ったように、けれどどろりとした甘い声で話しかけていた二宮さんがいぶかしげに名前を呼ぶ。

翔さんは自分の腕を持ち上げると、頬に触れた二宮さんの手をそっと引き離した。

ふるふると、力なく首を振る。

「違う、カズ。カズのことは大事。だけど、俺だって誰かを好きになったりはする」

「……翔ちゃ、」

「百合亜も、Aも。俺にとっては…好きな人だ。失いたくなかった。……カズにも、一緒に大切にしてほしかったんだ」

「…っ」

二宮さんがかすれた息を吐いた。

あの翔さんが、泣きそうな顔で二宮さんを見上げている。

「……ねぇカズ、俺はまだ大丈夫じゃないかもしれない。だけど、いつまでもカズに守られてばかりの俺じゃない。いつもカズに助けてもらうんじゃなくて、ちゃんと自分で選んで生きていきたい。……ねぇ、カズ、俺はもうカズに泣きついてばかりの俺とは違うよ」

「翔ちゃん……」

二宮さんの顔が歪んだ。

それは、泣きそう…とも、怒りそう…とも、悲しそうとも、寂しそうともとれる、複雑な表情だった。

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