Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ28)

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Episode41 -4 ページ28

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荷物を全部自分で持って先に歩き出して、すぐに私が付いてきてるか振り返る。

「A」

私と隣を歩くために、立ち止まって呼んでくれる。

いつもと同じ翔さんの姿が、泣きたいくらいに愛おしかった。

「ごめんなさい、すぐに」

目の端に浮かびそうになった涙を無理やり飲み込んで、私は翔さんの隣に肩を並べた。

ロビーに降りるとすでに二宮さんが待っていた。

一緒にいる私たちを見てニヤニヤと笑っている。

「俺荷物運んどくから、退院手続きしといでよ」

有無を言わさず翔さんの荷物を運んでいく二宮さん。

そんなやり取りには慣れているのか、翔さんはさして気にする様子もなく手続きの窓口へと私を連れて歩き出した。

二宮さんの車に乗って帰路に就くころには太陽がオレンジ色に街を染めていた。

「結局亜理紗は団体予約が急に入って休めなかったってさ」

「そうか」

「残念ですね」

「今度飯食いに行くって言っとくよ」

「そうして。翔ちゃんから言われれば喜ぶだろうし」

車の中には私たち三人しかいなかった。

荷物をトランクと助手席に乗せて、後部座席には私と翔さんが座っている。

運転席の真後ろに座っている私には、二宮さんの表情は分からない。

これもたぶん、翔さんの気遣いだろう。

気が付いた時には翔さんが助手席の後ろに座っていた。

昨日の今日だけど、二宮さんの態度はいつもと変わらない。

本当にもう、二宮さんの中では過ぎた出来事になってしまったのかもしれないと私は想像する。

二宮さんの中で、私はもう気にすべき対象ではなくなった、ということかもしれない。

なんにしても翔さんの態度はいつも通りだ。

二宮さんにとって重要なのはきっと、その部分なのだろう。

「やっぱり外はいいな」

「だいぶ春らしくなってきましたよ」

「そうか。じゃあ仕事の前に散歩でもするかな」

「翔ちゃん明日から仕事だっけ？」

「そう。もうしばらくゆっくりさせてくれたっていいのにな。潤曰く、店がピンチだと店長が泣いてたって」

「あはは、そうですか」

二宮さんの言葉を最後に会話が途切れる。

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