Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ22)

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Episode40 -5 ページ22

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「え…？」

一瞬で、身体が凍り付く。

おびえる様な顔をした私に、二宮さんは口の端をゆがめて笑った。

「口を、出した、って……どういう、ことですか…？」

震える声で問いかければ二宮さんは「怖がらなくてもいいじゃない」とのんきな声で呟く。

「もしかして、徳井さんに……なにか言いました…？」

脳裏に彼女の姿が浮かぶ。

深くて歪んだ、執着の形。

なぜだか妙に目の前の二宮さんと被って、ゆらりと視界の中で揺らめく。

「女の名前まで覚えてないよ」

そう軽く言って二宮さんは肩をすくめた。

「翔ちゃんと百合亜さんの関係を聞かれたから答えただけだよ。……恋人だ、ってね」

低い声で言葉を作って二宮さんは笑う。

「でも、それって内緒だったんじゃ…」

「うん、内緒だった」

悪びれもせずに二宮さんは言う。

「でも、翔ちゃんのためだからね」

今日初めて、二宮さんがひどく優しい顔をした。

私に向ける底の見えないような笑顔とは違う。

愛情に満ちた、誰かを想うその表情で。

悪いことだ、なんて、思っていないのだろう。

だってすべては、翔さんから女性を引き離すため。

助けてと言った、翔さんとの約束を守るため。

誰よりも大切な、その人のため。

「そのあとのことは知らないな。あぁ、でも…百合亜さんが翔ちゃんに会うためにタクシーを拾う場所を教えてあげたけどね」

「なっ…」

私は言葉を失くして二宮さんを見つめる。

二宮さんと一瞬だけ目が合った。

睨むような目とかち合って、けれどすぐに逸らされる。

その目はちょっと遠くを見るように私ではないどこかへ向けられた。

その目にはもう鋭い光は宿っていない。

私の凍り付いた表情なんて、少しも意に介さないような顔だった。

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