Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ11)

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Episode39 理由ページ11

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大きなため息を吐くと翔さんはリクライニングを上げたベッドに背中を押し付けた。

さすがに疲れたのかもしれないなと思う。

私は、どう言葉をかけるべきかと考える。

「翔さん…大丈夫、ですか？」

二宮さんがいなくなった病室で、私はこの一週間何度も思っては一度も口にできなかった質問を問いかけた。

翔さんの瞳が私を見る。

大きな目はちゃんと私を見てくれた。

「…大丈夫だよ」

一拍おいて翔さんが答える。

椅子に腰を下ろすとギッと音がした。

「悪かった、取り乱して」

「いえ、そんな…」

私は首を振る。

けれど、それでは何の慰めにもならない。

そもそも、翔さんが別に慰められたいと思っているわけではないと思うけれど。

少しでも翔さんの心を軽くしてあげたくて、必死に言葉を探す。

でも結局、何をどう言葉にすべきか迷って、声を出すことをあきらめてしまう。

そんな私の落ち着かない雰囲気を感じ取ったのか、翔さんが口元に笑みを浮かべる。

「……今のカズの話はほんとだよ」

「あ…」

思わず小さく声が漏れる。

翔さんは眉を下げて困ったように笑っていた。

「聞きたくないか、こんな話」

「……っ、いえ」

確かに少し驚く内容ではあったけど、聞きたくないわけなんかない。

「聞きたいです。……翔さんのお話を、ちゃんと」

好きな人のことを知りたくない人はいない。

私だって、翔さんのことをもっと知りたい、そんな欲の一つや二つはある。

翔さんは少しだけ目を丸くした。

その顔はすぐにどこか嬉しそうに綻ぶ。

それは、とても優しい顔だった。

翔さんが天井に目を向ける。

どこか遠くを見るようにして、翔さんは口を開いた。

「カズの話は本当だよ。母親…って言っても、父さんが再婚した大企業の娘で、血のつながりはないんだけど。俺の実母は別の人で、俺が中学に上がるころに離婚した」

「そうなんですか…」

「その実母は去年の年の瀬に亡くなった」

「！」

「まだ俺が紳士のふりをしてた頃にな」

だからこの間翔さんはお父様に向かって言っていたのだ。

母さんの葬式にも来なかったような奴、と。

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