Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》

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Episode38 すべては君との約束のためページ1

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三月に入っても風はまだ冷たい。

隣に翔さんがいない朝の通勤時間も、隣に二宮さんがいない夜の帰宅時間にも慣れてきた。

私は今日も智さんに早めに上がらせてもらうと、面会時間終了の二時間ほど前に病院の入り口をくぐった。

翔さん、今日は何して過ごしてたのかな。

そんなことを考えながら病室に向かう。

事件からちょうど一週間が経とうとしている。

昨日聞いたところによると大した怪我ではないからそろそろ退院できそうだということだった。

寝ているかもしれないから静かに扉を開ける。

すると、翔さんはベッドに横になっていた。

静かに扉を閉める。

音を立てないように顔をのぞき込むと、翔さんは眠っているようだった。

「こんばんは、翔さん」

起こさないように、小さく声を掛ける。

とそこで、私以外の来訪者がいることに気が付いた。

「あれ？これって二宮さんの…」

「A」

椅子に置いてあった荷物を見ていたら急に声を掛けられた。

私は翔さんへと顔を向ける。

大きな目が私を見上げていた。

「ごめんなさい翔さん、起こしちゃいましたか？」

「いや…目を瞑ってただけだよ。……お前ひとりか？」

「二宮さんが来てるみたいですね」

私は荷物を指さす。

翔さんは意外にも「知ってる」と短く呟いた。

「お会いになったんですか？」

「さっきまで話してた。そうそう、明後日退院できるってさ」

「ほんとですか？」

思わず声が大きくなると、翔さんが人差し指を唇の前で立てて「しー」と息を吐いた。

私が慌てて口を噤むと、翔さんがそれでいいとでも言うように頷く。

「さっきカズにも報告した。当日はカズが車を回してくれるってさ」

「そうですか」

小さめの声で私は返事をする。

二宮さんが迎えに来てくれるなら安心だ。

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