Episode27 -2 ページ9
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薔薇の花。
私はこの花が得意ではない。
嫌なことを思い出すから。
翔さんは嫌いだと言い放った花。
私と翔さんを繋げた、嫌いな薔薇。
そんな花だからこそ、私は以前ほど薔薇に対する苦手意識は強くない。
もちろんあんまり好きではないけれど、この花がなければ私は翔さんの手を取ることはできなかったんだろうと思うと、苦手なものでも特別に見えたりする。
「はい。お待たせいたしました」
お会計を済ませて薔薇を渡す。
徳井さんは綺麗な笑顔を浮かべてそれを受け取った。
「ありがとうございます。それじゃあ、また来ますね」
「お待ちしてます」
前とは少し違う心持ちで薔薇に触れた私は去っていく徳井さんの背中を見えなくなるまで見送った。
午後、百合を受け取りに来た翔さんと軽く立ち話をしながら私は明日の予定を告げる。
「そうだ翔さん、明日の朝は仕入れがあるんです」
「そうなの？」
「はい。なので、迎えに来ていただかなくて大丈夫です。すごく朝が早いので」
「そうは言っても……」
翔さんは微妙な顔をして思案顔。
気持ちはありがたいけれど、夜が遅い翔さんにあんなにも朝早い時間に迎えに来てもらうのは気が引ける。
「いや、やっぱり行くよ。寝ないで行くから平気」
「でも…それじゃあ翔さんの負担が、」
「自分の女が危険な目に会うかもしれないなら負担くらいどうってことない」
「っ、でも、あの…」
あまりにもストレートに言われて身体の奥が熱を持つ。
かあっと熱の上る頬をごまかすみたいに私は首を振る。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
