Episode28 -2 ページ15
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初老…とまではいかないくらいの、落ち着いた雰囲気の男性だ。
その男性は私が入ってきたのを見ると立ち上がって、丁寧に頭を下げた。
つい、つられて頭を下げる。
「(羽柴)君、ありがとう」
「いいえ。会長の頼みですから」
「さぁ…ええと、戸羽さんと言ったかな、こちらへどうぞ」
会長と呼ばれたその人は私の名前を呼んで向かいのソファを手のひらで示した。
私はとりあえずそれに従い、ソファに腰を下ろす。
ガラステーブルを挟んで向かいのソファに同じように座った男性は手を組んで私の顔を見やった。
どことなく、初めて会った気がしないのはなんでだろうか。
「戸羽Aさん…であっているかな」
「はい」
「あぁすまない、自己紹介が先だったね…私は翔の父親だ」
「！」
あぁ、だからか。
と私は思う。
どことなく顔立ちが翔さんに似ているのだ。
だから会ったことあるような気がしたんだ。
まず考えたのはそんなことで。
それから、どうして翔さんのお父様が私を攫うような真似をするんだろうかと疑問が湧く。
私の視線に気持ちを読み取ったのか翔さんのお父様はふっとその口元を和らげた。
「ひどいことなどするつもりはないよ。乱暴な方法で済まなかった。普通に招待してもおそらくお答えいただけないと思ったものでね」
言葉は丁寧だけど、その節々には妙な威圧感がある。
プレッシャーを感じながら、私は汗のにじむ手を握りしめる。
「私に何か御用でしょうか」
「うん…君は翔の恋人らしいが、本当かな」
「………本当です」
そう返事をすれば、彼は満足そうにうなずいた。
「そうか。では単刀直入に言おう。……翔と別れてくれないかな」
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
