Episode10 -7 ページ37
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「イブを邪魔して悪かったな。雅紀くん、だっけ？にも謝っといてくれ」
「いえそんな、気にしないでください。割って入ったのは私たちの方ですし」
「じゃあな……あ」
一度は背を向けた櫻井さんがふと立ち止まって振り返る。
「……心配しなくても、お前を手酷く振るために付き合ったりはしねぇから」
「！」
「………お前と付き合えたのに、振るなんて真似しねぇから、俺は」
「っ、」
「……ふ、冗談だよ。そんな顔すんなって。……まぁ、そういうわけだ。あんまり俺に深入りすんなよ。猫かぶって生きてるからさ、お前も猫かぶりに騙されないようにな」
行ってしまう。
そんなことを言い残して、櫻井さんが行ってしまう。
それはほとんど勘だった。
このまま櫻井さんと会えなくなってしまうんじゃないかと、胸の奥で何かがざわりと音を立てていた。
今伝えておかなければ、私は後悔するかもしれない。
雅紀くんが運命だと名付けてくれたこの淡い何かを、こぼしてしまわないように。
声を、ちゃんと届けなければ。
「私は！」
急に大声を出した私に櫻井さんが歩みを止めてまた振り返る。
「私は、櫻井さんになら、騙されたっていいですよ」
臆病な私の精一杯の強がり。
背伸びして、なんとか、紡ぎだした言葉。
変わってしまうことはとても怖くて、変えることはとても難しい。
それでも人は、変わらなければ進めない。
一歩、進めたのなら。
次の一歩を、踏み出さなければ。
櫻井さんの大きな瞳がさらに大きく見開かれた。
けれどそれはほんの一瞬、次の瞬間には少し目を細めてうかがうような表情。
一歩、二歩と、櫻井さんが近づいてくる。
その圧に何となく耐えかねて、私は一歩、二歩と後退した。
やがて背中がエントランスの壁にぶつかる。
最初から逃げられないことは分かっていたけれど、もう櫻井さんは手を伸ばせば届くところまで来ている。
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iCHiKA(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます。初めから読んでいただいているとのこととても光栄です。これ伝わるかなぁと思いながら書いてたシーンなんですが、そう言っていただけてよかったです！引き続きお楽しみいただけるよう頑張りますのでお付き合いの方よろしくお願いします。 (2020年2月5日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。立ち上げ当初から読ませて頂いてたんですが、今回のシーン、ゾクゾクしました！素敵です。このお話がとても好きなので、更新楽しみにしてますね。 (2020年2月4日 20時) (レス) id: c24168ecda (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - あまさん» 続編にもお越しいただきありがとうございます！引き続きお付き合い願えれば嬉しいです。 (2019年12月29日 21時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
あま - 移行お疲れ様です!!!これからも楽しみにしてます!頑張ってください!!! (2019年12月29日 0時) (レス) id: 5287825b4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年12月27日 15時
