Episode9 -11 ページ29
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私は、どうしよう。
雅紀くんの誕生日祝いどころではないし、二宮さんには悪いけれどやっぱり少し怖い。
テーブルの下に残した左手にはまだ櫻井さんの大きな手が重ねられている。
様子をうかがってみるけど櫻井さんはちらりともこちらを見ない。
どうしたらいいかわからなくてレモンサワーのグラスに手を伸ばした。
先ほどのやり取りに緊張したみたいにグラスの表面はうっすらと濡れていてさっきと同じように指先を湿らせた。
湿った指が滑りづらくなってざらりとする気がしてグラスを置く。
そんな私の横で櫻井さんが残りのビールを一気に飲み干した。
白いのどが動くところがすぐそばで見えてなんだか身体の奥が熱を持つ。
ゴトンとグラスがテーブルに置かれると、櫻井さんが私の方を見た。
そこにはいつものような笑顔は浮かんでいない。
完璧な微笑でも不機嫌そうな無表情でもない。
それは初めて見る、普通の顔だった。
「翔ちゃん、次飲む？」
「いや、悪いけど帰る。これで払っといて」
手に重なっていた手が離れていった。
普通の顔のまま櫻井さんはお財布から何枚かお札を取り出した。
それをなんとなく見ていたら前に座っている雅紀くんが何を思ったのか私のレモンサワーに手を伸ばした。
「雅紀くん？」
持ち上げるなり一気にそれを煽る。
量はどんどん減ってあっという間にレモンサワーは雅紀くんののどに吸い込まれてしまった。
ぷはっとグラスをテーブルに置くと雅紀くんが立ち上がって私の腕を引く。
「あの、櫻井さん、Aももう帰るんでよかったら送ってもらえませんか？」
「え、雅紀くん…！」
急に雅紀くんがそんなことを言うものだから焦って名前を呼ぶ。
見上げれば雅紀くんと向き合った櫻井さんが私を見下ろした。
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iCHiKA(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます。初めから読んでいただいているとのこととても光栄です。これ伝わるかなぁと思いながら書いてたシーンなんですが、そう言っていただけてよかったです！引き続きお楽しみいただけるよう頑張りますのでお付き合いの方よろしくお願いします。 (2020年2月5日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。立ち上げ当初から読ませて頂いてたんですが、今回のシーン、ゾクゾクしました！素敵です。このお話がとても好きなので、更新楽しみにしてますね。 (2020年2月4日 20時) (レス) id: c24168ecda (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - あまさん» 続編にもお越しいただきありがとうございます！引き続きお付き合い願えれば嬉しいです。 (2019年12月29日 21時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
あま - 移行お疲れ様です!!!これからも楽しみにしてます!頑張ってください!!! (2019年12月29日 0時) (レス) id: 5287825b4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年12月27日 15時
