Episode8 -11 ページ18
.
ふいに後ろから声をかけられて櫻井さんが振り向く。
つられるように私も後ろを振り返った。
そこには腰近くまである黒髪をなびかせてこちらを見ているきれいな女性が立っていた。
「理子さん、偶然ですね」
「そうね。百合くんに会えるなんてラッキーだわ。お仕事中だった？」
ちらりと、理子さんと呼ばれた女性が私を見る。
「いえ、今はプライベートですよ」
「……そう」
「！」
理子さんの視線が鋭くなった。
じっと睨みつけるように見られて、身体に力が入る。
櫻井さんがそんな私を庇うように理子さんとの間に身体をずらす。
櫻井さんの黒いダウンジャケットに包まれた広い背中が視界に広がった。
理子さんの視線が見えなくなって、詰まっていた息を吐きだす。
「俺も理子さんに会えてうれしいですけどね。またお店で待ってますね」
「今夜行くわ」
「それは楽しみです。また会社の話聞かせてくださいね」
「ええ……失礼するわ」
去り際、理子さんと目が合ってやっぱり鋭く睨まれてしまった。
その背中が人並みの向こうに消えると、櫻井さんが私の腕をぐいと引く。
「行きましょう」
「は、はい…」
腕をつかまれたまま少し歩いて繁華街から駅前通りに出ると櫻井さんはようやく私の腕をつかんでいた手を離した。
「すみません、俺のお客さんなんですけど…ちょっとプライドが高い方で」
「いえ…その、大丈夫ですよ」
先ほどの視線を思い出すと少し怖くはあるけれど、申し訳なさそうな顔をしている櫻井さんにそんな顔をしてほしくなくて笑いかける。
櫻井さんは力なく笑うと息をついた。
「この街だとたまにあるんですお客さんに会うこと。ごめんなさい、怖かったですよね」
「大丈夫ですよ、櫻井さんのせいじゃありませんし」
「ごめんね」
最後に呟くようにそう言った櫻井さんはにこりと笑顔を浮かべて私の顔をのぞき込む。
「駅までの予定でしたけど、よかったらお店の近くまで送らせてもらえますか？」
「…お願いします」
「はい」
恭しくお辞儀をする櫻井さんに笑い返しながら、お店への道を二人で戻り始めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 787人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iCHiKA(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます。初めから読んでいただいているとのこととても光栄です。これ伝わるかなぁと思いながら書いてたシーンなんですが、そう言っていただけてよかったです！引き続きお楽しみいただけるよう頑張りますのでお付き合いの方よろしくお願いします。 (2020年2月5日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。立ち上げ当初から読ませて頂いてたんですが、今回のシーン、ゾクゾクしました！素敵です。このお話がとても好きなので、更新楽しみにしてますね。 (2020年2月4日 20時) (レス) id: c24168ecda (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - あまさん» 続編にもお越しいただきありがとうございます！引き続きお付き合い願えれば嬉しいです。 (2019年12月29日 21時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
あま - 移行お疲れ様です!!!これからも楽しみにしてます!頑張ってください!!! (2019年12月29日 0時) (レス) id: 5287825b4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年12月27日 15時
