すれ違いが9回。 ページ10
side:knmc
またしても水瀬さんとの会話に失敗したその日。
部活が終わって家に帰る途中、椎名から連絡が来た。僕にとっての椎名は友人兼相談相手でもあり、よく話を聞いてもらう。
どうやら今日は水瀬さんと遊んでいたようで。二人が笑顔でピースしている写真が添付され、「今日Aと遊んでてん!羨ましいやろ?」というメッセージがドヤ顔のスタンプ付きで送られてきていた。
なんか腹立つなこいつ……wとか思いつつも、水瀬さんの控えめで可愛らしい笑みに釘付けになる。
生憎僕は一方的に見つめて怖がらせてしまっているだけの存在なので、面と向かって彼女に笑いかけてもらったことすらない。
最近は水瀬さんに話しかけてみたり、ガッくんや椎名に相談したりとかしているけれど、一向に上手くいく気配はなくて。……僕が逃げているのもあるんだろうけど。
やっぱり僕は嫌われているのかもしれない、なんて考えていたりする。椎名もガッくんもそんなことないと思う、と口を揃えていってくれるが。
結局、彼女に僕の気持ちは伝わっていないのだろう。少しくらい意識してくれてもいいと思うけどな???僕だっけ結構頑張ってるんですけどね…
明日は椎名の名前でも使って世間話でもしてみよう。変に緊張しないで落ち着けばきっと話せるはずだ。また気まずい雰囲気になってしまうかもしれないけど、頑張れ、僕。
side:水瀬A
あのあと家に着いて、もうあとは寝るだけの状態。
どうしても寝れそうになくて、起き上がって色んなことを考えていた。
しいちゃんのこと、元彼のこと、それから_______剣持くんのこと。
『なんで剣持くんと話す時、あんなに緊張しちゃうのかなぁ?別に、嫌いってわけじゃないんだけどなぁ、』
そう、しいちゃんがカフェで言っていた通り、私は人見知りはするタイプだけれど慣れたら全然緊張なんてせず話すことが出来るのだ。
剣持くんとは、しいちゃんを通して何度も話は聞いているし、目が合ったことも話したこともある。なのにどうしてこんなにも、目が会う度に緊張して言葉が出なくなるんだろう。
しかも緊張して話せなくなるのに、また話したい、なんて思ってしまうのだ。
明日も、なにか話せるかな。明日もし目が合ったら、しいちゃんの話でもしてみよう。共通の話題があれば、彼とも話すことが出来るかもしれないし。
そう決意したら、なんだかさっきまでの気持ちが嘘のように晴れやかな気分で眠りにつくことが出来た。
131人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時:2023年9月14日 0時