怖がらないで水瀬さん【knmc】 (ページ8)

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すれ違いが7回。ページ8

次の日の放課後、いつも通り二人きりになった教室。
今日もこちらを見つめてくる剣持くん。

私はというと、昨日の決意はどこへ行ってしまったのか、前の方を向いて、彼の存在を意識しないように絵を描いていた。
昨日彼の目を見返した時に見たあの景色をぼんやりと思い出しながら手を動かす。

すると、不意に横に誰かが立つ気配がした。誰か、といっても一人しかいないのだけれど。

視線を上げるとやっぱり剣持くんで。手元の絵を眺めているみたいだった。
なんだかとても恥ずかしい気分になりながら、あの…と声をかけると、我に帰ったようにこっちをみて、少し慌てたように話し始めた。

「前から思ってましたけど、水瀬さん、絵上手ですよね。」

『そっ、そうですか？あ、ありがとうございます…』

会話が途切れる。
どうしてうまい返しができないんだろう。元々人と会話するのは得意な方じゃないけれど、それにしても会話が続かなさすぎる。
どうしよう、気まずい……何を話せば………なんて思っていると、彼も気まずい沈黙に耐えかねたのか、

「このあと部活があるので先に失礼しますね。その……絵、完成するの楽しみにしてます。では水瀬さん、また明日。」

なんて言って荷物を持って教室を出て行ってしまった。
あんなに話しやすくて面白いって有名な剣持くんが喋ってくれないって…私ってダメなのかなぁ……
どんどん自信がなくなっていく。

彼のいなくなって静かになった教室は、なんだか少し肌寒く感じた。

私、最近変だしなぁ、ほんとにどうしちゃったんだろう…明日にでもしいちゃんに相談してみよ、なんて考えていると、スマホからLINEの通知が来た。見ると、今まさに考えていたしいちゃんこと椎名唯華からの連絡で。

今からカフェにでもいかないか、とのこと。

普段はあまり行かないし、けれどどうしよ、と迷ったのは一瞬で、剣持くんとのことを相談したいのもあったし行くと伝えて、準備をして急いで学校を後にした。

「A〜！」

『しいちゃんー！放課後こうやって会うの久しぶりだねぇ。』

「言われてみればそうやね！久々に来てくれるって聞いてあてぃしめっちゃおどろいたんよ！wなんか相談したいことでもあるん？」

『しいちゃんやっぱり鋭いねぇ、とりあえず立ち話もなんだし中入ってから話すよ！』

剣持くんとしいちゃんは仲がいい。だからこそ彼女に相談に乗ってもらって、この気まずい関係と自信のなさをなんとかしたい、と思った。