すれ違いが4回。 ページ5
side:knmc
水瀬さんに視線を向けられて焦って荷物を持って部活まで来たところまでは良かった。
そこまでは良かったのだ。
「あれ…お弁当袋がない……」
そう、お弁当袋を教室に忘れてきてしまったのだ。
「あ"ー…どうしよう……」
今戻っても間違いなく彼女が教室にいる。
あの気まずい空気をまた味わうのか?いや、見られたこと自体は嫌ではなかったのだけれど。
水瀬さんに、好きな人に見つめられると、やはり落ち着かないのだ。
俺だってれっきとした男子高校生だし…
部活終わりに取りに行けそうなら行って、無理そうなら帰ってからお母さんに謝って明日持って帰るか…なんて考えながら部活に向かった。
厳しい顧問に扱かれながら今日も稽古に打ち込みながらふと、彼女のことを思い出した。
どうして今日はこちらの方に視線を向けてきたのだろう、なんて考えていると、顧問から怒声が響いた。
「剣持!集中できていないんじゃないか!?やる気がないなら一度外で頭冷やしてこい!!」
…やらかした。おい僕、流石に顧問がいる前でボーッとするのはやらかしだぞ。
部活に集中できていないなんて雑念が消せていない証拠だ。
顧問の言うとおり、一度頭を冷やしてこよう。
そう思い、顧問に「頭、冷やしてきます。」と伝えて外に出た。
するとそこには、路頭に迷った子猫のような顔で武道館の前に佇む君がいた。
「どうしてここに…?」
131人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時:2023年9月14日 0時