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すれ違いが30回。 ページ31

段々と剣持くんの距離が近くなってきている気がする。物理的にも、精神的にも。
ボディタッチの数は増えたし、一緒に帰る時はたまに手を握られたりもする。

敬語は気まずかった頃は考えられないほどに減って、今ではかなり砕けた口調で喋ってくれたり、冗談を言って笑わせてくれることもある。彼の話はとっても面白いのだ。



でも剣持くんは、何を考えているんだろう。
私の事、少しは…少しは好きでいてくれるのかな、?なんて自惚れてしまいそう。

でも私だってそこまで馬鹿じゃないから、彼の目に込められた少しの熱に、気づいてしまった。これは多分、自惚れなんかじゃないんだと思う。



気づいた時、自信もないし…ってまた逃げようとしてしまったけれど、私ももう彼のことを、もう元に戻れないくらいに好きになってしまったから。





彼に一か八か、告白…してみようかな……






そんなことをうっすらと考え始め、前に進み始めていた時のことだった。


その日は、部活があるという剣持くんに対して私は何も無くて。そして最近は彼の部活が終わるまで待っていたりしていたのだけれど、彼を待っている間にいうも読んでいる本を忘れてしまったから、今日は1人で先に帰ると伝えて一人で帰っていた。


いつも通り家に向かう道を歩いていると、後ろから誰かに声をかけられた。



「久しぶりだな、A。」



あぁ_______





最悪だ。




その声を聞いた瞬間、背筋がぞわりと泡立つ感覚がして、呼吸が浅くなる。

もう顔も見たくないし声も聞きたくないと、そう思っていた。あの時私を捨てた、元彼の声だった。


きもちわるい、こっちに来ないでよ。
なんでここに?おかしい、連絡先は消したし、家に連れてきたこともない。なんでバレて…?


混乱して頭が上手く回らない。とにかく、ここから離れたかった。でも彼は私の腕を掴んで、図々しくもこういったのだ。


「お前なんか可愛くなったな?今なら俺とも釣り合いそうだし復縁しようぜ。するよな?お前、俺のこと大好きだったもんな。」


本当に気持ちが悪い。なんであんなことをしておいて、こんな仕打ちが出来るのだろうか。掴まれた腕が痛くて仕方がない。



剣持くんなら、私をもっと優しく丁寧に扱ってくれるのに。


剣持くんなら、私をこんなふうに下に見たりしない。


剣持くんなら_______




結局私は、泣きそうになりながら小さな声で助けを呼ぶことしか出来なかった。



『けんもち、く……』

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作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/  
作成日時:2023年9月14日 0時

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