すれ違いが28回。 ページ29
「『…え』」
彼女………?
かのじょ…………???
なんて私が考えている間に彼らは正気に戻ったらしく、
「んだよ、彼氏いるなら先に言えっつーの!」
なんていいながら去っていった。
待って私は彼女なんかじゃなくてですね……なんて訂正する時間もなかった。
剣「ちょっとハプニングは起きたけどおはよう、水瀬さん」
『あ…おはよう!』
慌てて挨拶を返すと、
剣「あ、その服…可愛いです。似合ってますね。」
なんて少し顔を赤くしながら目を逸らして、最近は少し減ってきていた敬語で言うものだから、嬉しいのに恥ずかしくて仕方がない。
『ぁ…ぁりがと…うれしい、』
なんて蚊の鳴くような声で返事をすると、剣持くんは嬉しそうに笑って、
剣「そろそろ行きますか。」
と言って私の手を引いて歩き始めた。
まって、手汗かいてないよね!?あとなんで手…!?
なんて考えていると、ふとしいちゃんのことを思い出す。
『そうだ、剣持くん。しいちゃんが用事入っちゃって来れないって話聞いた?』
剣「急に用事って流石に僕も驚きましたよwwでも、─────」
手を引かれているのに聞こえないくらい小さな声で何かを剣持くんが言ったけれど、聞き取れなかった。まあ、また機会があったときに聞けばいい、かな?
今日は元々、しいちゃんもいる予定だったから、近くの大きなショッピングモールで買い物をすることになっている。
結局彼に手のことを聞けないまま離すタイミングもなくなってしまい、電車とかではさすがに私が離したけど、電車を出たらまたすぐに手を握られて、結局手は繋いだままになっている。
なんで手、握られてるんだろ……
あ、まさか私、迷子になりそうだと思われてる!?たしかにちょっと方向音痴なのは認めるけどなんか不満だ。
なんて思って少しむくれていると、
剣「水瀬さんどうしたんですか?」
『なんにもないよ。』
剣「僕が何かしたなら謝りますから…教えてくれませんか。」
『その、手……迷子になりそうだから繋がれてるのかなとか思って子供扱いされたのかなって……』
剣「っふふ、そういう事ですかw子供扱いなんてしてませんから安心してくださいwwこれは、その…僕が繋ぎたくて繋いでるというか……と、とにかく!嫌だったら離してくれて構いませんから…」
『……嫌じゃ…ないから……その、大丈夫。』
なんだか甘くなった雰囲気に気恥ずかしく思いつつも、手の温かさがじんわりと身に染みる感じがした。
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作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時:2023年9月14日 0時