すれ違いが22回。 ページ23
「…え?」
3人は声を揃えて驚いていた。それもそうか、ふつう、謝った相手から感謝されるなんて思っていないだろうから。
でも私は…
『私は、正直に言うと、あなたたちの言葉に傷つきもしましたし、会う度に、顔を合わせる度に色々と言われるのはつらかったです。でも、好きって気持ちは、誰にも止められないものです。行き過ぎていたとしても、それがあなたたちの愛だったことに代わりはありませんから。』
3人は驚いたようにこちらを見つめてくる。私は続けた。
『好きな相手と仲のいい人に謝るなんてこと、普通はしたくありませんよね。』
そういうと、3人ともが目を伏せた。やっぱり。3人とも、私に対して多少は申し訳なく思ってはいるし反省もしていてもうこんなことをしなさそうではあるけれど、好きな相手の仲良い人になんて、普通謝りたくはない。
『……それなのにあなた方は、不本意だとしても、私に謝ってくれた。だから、謝ってくれてありがとうございます。と言いたいのです。とても勇気のいることだと思います。許せるかどうかは、まだ分かりません。優柔不断でごめんなさい。けど、あなた方が謝ってくれたことは、本当に嬉しかったです。ありがとう。』
3人の目には少しだけ、涙が浮かんでいた。きっと、相当悩んだのだろう。その気持ちだけでもありがたかった。
「そっ、か……ありがとう、ほんとにごめん。…」
3人は口早にそう言うと、踵を返して教室を出ていった。
3人が出ていって、剣持くんと2人きりになった教室。2人きりになるのは私が彼を避け始める前なので本当に久々だ。
彼に引き止められたときに掴まれて今もなお彼と触れ合っている右手が熱い。彼は感心したように、けれど先程の私の発言に驚いたかのようにこちらを見つめてくる。本当に恥ずかしい。
恥ずかしいけれど、手が掴まれている以上逃げ場なんてなくて、彼を見つめ返す。
数秒見つめあったあと、話し始めたのは彼の方だった。
剣「水瀬さん、謝ってくれてありがとうなんていうから驚きました。あなたは本当に優しい人ですね。」
褒めてくれるのは嬉しいけれど…
愛おしいものを見つめるような、甘さを含んだ目でこちらを見つめてくるのはやめて欲しい。恥ずかしいから。
どんどん顔が赤くなっていくのを自覚する。けど、手は掴まれているからやっぱり逃げ場はなくて。ゆっくりと視線を上げて彼を見つめ返して、
『ありがとう…ございます……』
と返すのが私には精一杯だった。
130人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時:2023年9月14日 0時