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すれ違いが14回。 ページ15

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涙を必死に拭っている彼女の手を引いて立ち上がらせ、向かい合ってからそう言い放ち、彼女をそっと抱きしめた。


『け、剣持くん…?ブレザー、濡れちゃう、あと、恥ずかしい、です…』


すぐに抵抗するように胸板を押されて、けれど離してしまえばまたどこかに行ってしまいそうな気がして。離す気になれなかった。


「ここには僕達しかいませんし、第1今は授業中ですから人は来ないと思いますよ。あと僕のブレザーくらい、濡れたところでどうってことないのでご心配なく。」


それでもやっぱり恥ずかしいから離してほしい、というので渋々体を離し彼女と目を合わせてどうして泣いているかと問いかけると、彼女は強ばったような表情で恐る恐るこちらを見あげてきた。

……少しきつく言いすぎただろうか。それとも、あまり聞かれたくないことを聞いてしまったのかもしれない。
詳しく聞きたいところではあるが、そんな事をして嫌われてしまっては元も子もないし、悔しいけれど、僕はまだ彼女の悩みを聞いてあげられるほど仲が昔から良かった訳でもない。


「…僕には言えませんか?だとしても、僕は怒りませんし、無理強いはしませんよ。誰にだって言えないことはあります。だから、言えとはいいません。でも、もしあなたがその辛さに耐えられなくなったなら、そのときは僕を頼ってくれてもいいんだよ、だけは言っておきます。今、泣きたいなら泣いても構いません。僕の胸くらい、あなたにならいくらでもお貸しします。」

僕の言いたいことは全て言えた。あとは彼女がどうするかだけれど、どんな行動を取ったとしても甘んじて受け入れよう。
そんな覚悟を決めて、できる限り優しく見えるような笑みを浮かべて彼女を見つめると、彼女は少し恥ずかしそうに俯きながら僕の制服の袖を掴み、俯きながらこういった。


『じゃあ、お借りしても…いいですか、』と。


最初言葉の意味が理解出来ず、思わずは、と声を出してしまったがこれは仕方がないことだと思う。

誤解を生まないよう、すぐに訂正して彼女を胸元に引き寄せる。最初に引き寄せたときよりもずっと強く、抱きしめた。さっきとは違って、彼女も僕の背中に手を回してくれた。

自意識過剰かもしれないけれど、その背中に回った手が僕を少しでも頼ってくれたことの証のようなものだと思うと、嬉しくて堪らなかった。


水瀬さんが我に返って、恥ずかしいから離して欲しいと再び抵抗するまで、あと数分。

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作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/  
作成日時:2023年9月14日 0時

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