すれ違いが13回。 ページ14
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午後の授業が始まる5分前の予鈴が鳴って、席に着き彼女の席の方に目を向けると、なぜが空席のままだった。教室内をぐるりと見渡すけれど、やはり彼女の姿は見えない。
不思議に思って椎名に連絡を入れたけれど、昼休みは一緒に過ごせなかったという。
今日、休み時間に喋ったけれど、特に体調が悪い、というわけではなさそうだった。
まさか、何かに巻き込まれてしまったのだろうか。
なんだかとても胸騒ぎがする。
今行かないと、大切なものを失ってしまうような、そんな気がして。
居てもたってもいられず、近くの席の友人に
「僕ちょっとお腹痛くなってきたからトイレ行ってくる」
なんてバレバレの嘘をついて外に出た。数学の先生はいつも来るのが遅い。今日だけは、そのことに感謝した。
椎名に事情を説明し、水瀬さんの行きそうな場所を聞いては見たものの、既読がつかない。そうか、もう授業中か。
どうやって探せばいいのだろう。なんて途方に暮れる。
しらみ潰しに校内を駆け回るなんてこと、バレたら間違いなく生徒指導であるし、そんなの効率が悪すぎる。
授業中であるしきっと人の少ない場所で彼女が行きそうな場所……
1箇所だけ思い当たるところがあった。僕は迷わずそこに足を運んだ。
なぜかは僕にも分からないけれど、なんとなく彼女はそこにいるような、そんな気がした。
屋上への扉を開け外を見ると、そこには今にも消えてしまいそうなほどに縮こまって座っている彼女がいた。
彼女の目の端には涙が浮かんでいて、泣かぬように必死に耐えている、そんな様子だった。
そんな彼女に、僕は迷わず声をかけた。
「こんなところにいたんですか、水瀬さん。」と。
彼女はその涙の浮かんだ目を驚いたのか大きく見開いて。その拍子にポロリと一筋の涙が頬を伝った。
『どうして…ここ、に……?』
涙を流したことに対する焦りなのか、慌てたような彼女の様子に、僕も驚いた。彼女が泣いているところなんて、初めて見たから。
普段は大人しいタイプであまり人と会話せず、仲の良い人と喋るときにも常に笑顔で底なしに明るい彼女が、泣いている。
その事実を認識した時、僕が初めに感じた気持ちは“怒り“だった。
彼女を泣かせたのは何処のどいつだ。今すぐ殴り飛ばしに行きたい。自分でも驚く程に怒りが込み上げてきて、けれど今は彼女の方が心配であった。
「なんとなくですよ。ここにあなたがいる気がして。」
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作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時:2023年9月14日 0時