怖がらないで水瀬さん【knmc】 (ページ12)

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すれ違いが11回。ページ12

side：knmc

どうやら僕は、相当な臆病者らしい。
椎名の名前を使って彼女と話をしよう、なんて決意をした次の日。
昨日の決意はどこへ行ったのか、僕はまた彼女を見つめることしか出来なかった。

彼女をボーッと見つめていると、彼女はこちらに向かってきて、緊張した顔つきで僕にこう言った。

『剣持くんって、しいちゃん…椎名さんと仲良い…ですよね……あの、昨日しいちゃんと遊んだ時に、話…聞いて。その…よければ、お話…してみませんか……』

………ぇ？

彼女が僕をを見ていることも、なんて言ったのかも、信じられない。
僕が目を見開いて驚いていると、沈黙に耐えきれなくなったのか、彼女が声をかけてきた。

弾かれるように彼女に視線を合わせると顔を赤くして俯いていたので、可愛いな…なんて思いながら自分の耳が赤くなっていることを自覚しつつもどうぞ、と言い、続けて隣の席を勧める。

話しかけてきた時から赤面している水瀬さん。いや、可愛すぎか？なんて思いながら彼女のことを見つめていると、なにやら赤面しながらも焦ったような顔で何かを考えている。

いや可愛いなwと思っていると怒ったような、不思議そうな視線を向けられてしまった。どうやら笑いが漏れてしまっていたらしい。コロコロと変わる表情が可愛すぎてツボに入ってしまった。

「っふふ、w顔赤いのそんなに焦った顔してる人見た事ないですよwwそんなに焦らなくてもいいのにwww」

と言うと、耳を赤くしながら爆笑している僕も同じだと言われてしまった。赤くなっているのがバレてしまったのは少し恥ずかしいけれど、あなたとお揃いなら、悪くないものですね。なんて思ってしまう僕は相当重症だ。

爆笑してしまったことで納得のいかないような表情をされてしまったけれど、そのお陰で水瀬さんとの間に流れていた雰囲気は一気に良くなったから、良かったのかもしれない。

彼女とは、たわいもない話をした。

料理が好きなこととか、甘いものが好きなこととか、色々と似たところがあって、思っていたよりも気が合った。

会話が一段落したタイミングで、測ったかのようにアラームが鳴った。部活の時間だ。もっと話していたかったけれど、この間のことといい、今度は遅刻で顧問に叱られる訳にも行かない。

時間はないけれど、どうしてもまた話したいと思って、

「また明日、この時間に話しませんか。」

と言うと、彼女は笑って『もちろん。』と嬉しそうに言った。

その笑顔でまた、好きになった。