すれ違いが1回。 ページ2
____今日も、視線を感じる。
終礼も終わり、少しずつ人の減った放課後の静かな教室。
残っているのは私と彼だけ。
なのにどうして私は毎日、この二人きりの教室で、彼に睨まれているのだろう。
放課後、私はいつも本を読んだり絵を描いたり、ゆっくり過ごして人が少なくなってからから帰るのだ。
初めは1人だった。
その空間に彼がいるようになったのは、一体いつからだったか。
別に居心地が悪いわけではないし、むしろ穏やかで過ごしやすい雰囲気ではある。
けれどその時間、いつも彼はこちらを見つめてくる。
その視線だけは慣れずに、少し居心地が悪く感じる。
(かっこいいけど、やっぱりちょっと怖いなぁ……)
彼に見られていると気づいた時、私は驚いたと同時に困惑した。
___だって…“あの“剣持君だよ?
剣道部に所属していて、容姿端麗。
それでいて物腰柔らかなのに優しく、頭の回転も早い。
そんな彼がモテないはずもなく、2年生で同じクラスになってからずっと、彼は男子からも女子からもモテモテだ。
なのに浮ついた話はひとつも聞かない。
彼はなにか特殊な趣味趣向でも持っているのではないか、なんて噂が立ったくらいだ。
そんな彼が、この放課後の2人きりのこの時間にいつもこちらを見つめてボーッと10分ほど過ごしたあと、慌てたように部活に向かっていくのである。
私、何かしたっけ……
剣持くん、何がしたいんだろう……
私は決して彼が嫌いではないし、むしろ好感を持っている方だと思う。
けれど、私を見つめる意図が分からなくて、ただ少し怖く思っているのもまた事実なのだ。
剣持くんは、何を考えているんだろう。
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作者名:K | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/468/
作成日時:2023年9月14日 0時