続富豪刑事の護衛(仮) (ページ10)

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大助のもとに戻る途中、傷だらけの鈴江を見つけた。しかも腕を抑えている。
「鈴江さん」
「Aさん！大丈夫ですか」
「そっくりお返しするよ。その腕、どうしたんだ」
「猫を轢くところでした」
「それでコケたのか」
俯いた鈴江は、乾いた笑いをこぼした。それ以上は何も話さず、大使館に続く道の先を見つめていた。
大使館に戻ると、加藤が大助に向かって口を開いているのが見えた。
何について話しているかわからないが、大助が目を見開いているという事は、ヒュスクの事だろう。
しかし、この事実を口外するのはあまりにも危険すぎる。現に、仲本が現場に居たのだ。何か知らで聞かれては困る。
大助が答える前に大使館に着くには、走るしかない。
「少し走るよ」
顔を歪めながら走っている鈴江を見て、胸が痛くなる。
「あとで何か奢ってあげる」
鈴江がAの焦り様をみて、何かに気が付いた。
「大助様！」
「鈴江さん」
加藤の意識を鈴江に向かわせ、大助との会話を終わらせる。
「さっきの事は絶対に話すな。それと、仲本が駐車場に居た。何かしてくるだろうな」
地面を見ていた大助は、すごいスピードで頭をあげる。
「さあ、病院に行って帰りましょう。鈴江さん、帰りますよ。御先です」
Aは何もなかったかのように、普段通りのように振る舞い、リムジンへと歩いて行く。

翌朝、大助とAは出勤時間になっても家から出なかった。
『基本的には、ポリアドルで組み立てられてます。でも、プリント基板やら、カートリッジやら。結構日本製の物が入ってますね。このあたりの技術を持っているのは数社ありますが……』
『“水尾フューチャーテクノロジー”とか？』
『ええ、よく知っていますね。そこは結構有力だと思いますよ』
二人は地下室で、鑑識課の防犯カメラ映像を見ている。
「やはり探りを入れてきていますね」
「ああ」
「この事、鈴江さんには」
「まだだ」
「少し気になっていることがあって」
「なんだ」
「私の立ち位置は。それ以前に、神戸家にとって、私は何者なのでしょうか。インサイダー。それとも……アウトサイダー」

check-5 もし金を汝の召使としなければ、金は汝の主人となるだろうー終ー