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「お待ちください」
SPが見ている方に目を向けるが、Aが立っている所からは何も見えない。
「何だ」
「これは」
そう言い、SPが手にしたのは一通の手紙だ。
「聖地であるラグファンの遺跡を、ダムに沈めることに反対する声明です。この男の故郷だったようで、天罰が下る――」
「くだらん!そんなものはどうでも良い。ここを出る方法か、こいつを止める方法をなんとかしろ!」
タイムリミットまで、残り四分を切った。
「鈴江が到着するまで、あと何分だ」
「あと一分四十五……九分三十秒ほどと思われます」
「さっさと、ここから出せ!」
「残念ながら方法が!」
時間まで後二分を切った。刻々と迫りくる時間に比例するように、全員に焦りが見え始めた。
「起動装置の設計図を出せ。解除方法もだ」
「……お答えできません」
「どういう事だ。うちの系列会社の製品だろう」
「あなたには、その権限が与えられていません」
「A。同じことを質問してくれ」
「ヒュスク。起動装置の設計図と、解除方法を教えてください」
「あなたにはその権限が与えられていません」
「クソ……」
もう三十秒もない。Aは着ている上着を脱ぎながら、洗面台へと向かった。
「大助も上着貸せ!」
久しぶりに呼び捨てにされた大助は一瞬驚くも、すぐに行動する。
「ここで死にたくねーけどしょうがない。大助はジャケットを被せろ。その後、スマートウォッチでカートリッジを壊す」
「良いだろう」
「吸ったときは吸った時だ。……成功を祈るしかない」
「あと十五秒だ」
行くぞと言ってすぐにAが頷く。それを見た大助は装置に向かって走り出す。
「下がっていろ」
大助がジャケットを被せたことを確認したAは、勢いよく腕時計を振り下ろす。
「助けに来たぜ!」
カートリッジを壊す寸前だった。加藤が扉を開けたのだ。
「退け加藤!」
Aは、カートリッジに向けていた体を扉の方へ向けると同時に、大助の手を引き外へ出る。
空いていた右手で加藤を押したため、加藤は後ろに倒れる。
外に出て直ぐ、自身の両手と大助の両手でラッチ受けを握り、扉を閉めようとするが閉まらない。
タイムリミットが過ぎ、ガスが噴射されてしまう。
「加藤!」
Aの声に気付いた加藤は、こちらを向く。
「閉めろ!」
大助の声を聞き、中を確認した加藤は急いで立ち上がり、やっとの思いで三人は扉を閉めた。
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作者名:Author | 作成日時:2020年8月28日 3時