続富豪刑事の護衛(仮) (ページ7)

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「ヒュスク。付近の通信状況を確認しろ」
「現在、大使館近隣の駐車場を中心に、半径八百メートルの範囲で、強力な通信障害が起きています」
「一体どういうことだ！」
大統領はSPのネクタイを掴むと、自分の方へ引っ張った。
「何らかの事情で、通信が遮断されています」
「何らかの事情とは何だ！」
「殺害と併せて考えると、テロである可能性は否定できません」
「復旧できるか」
「有効な手段は見つかりません。しかし、鈴江様がこちらの異変に気付かれたようです。予想到着時刻は、十二分三十秒後」
有効な手段が見つからないまま、時間だけが過ぎていく。
「しかし、犯行声明もなければ、要求もない。一体何がしたいんだ」
「ヒュスク。死体を遺棄する以前の、犯人の足取りを追え」
直ぐに映像が流れ始める。四十四番カメラの映像で殺害場所が特定された。
「貯蔵庫で殺したんだ」
すると、次に流れてきたのはパニックルームの前にあるカメラの映像だった。
「この部屋だ。ここで一体何をやってたんだ？」
また映像が切り替わる。
「クローゼットだ！」
切り替わった映像には、この部屋にあるクローゼットが映っており、そこで何かをやっているようだった。
全員で、映っていたクローゼットの前に立ち、SPが扉を開ける。
「あ。これは……」
そこにあったのは、時限爆弾のようなものだった。
箱の中には筒が二本あり、赤い色をしている。その手前には、タイマーがセットしてあり、残り四分三十秒となっていた。
「これは、我が国の治安維持隊が標準装備しているカートリッジです。しかし、通常とは色が……」
「止められんのか」
「停止すると、ガスが放出される仕組みのようです」
「カートリッジ及び、中の液体を分析しろ」
物の数秒でヒュスクは答えを導き出した。
「CXAセキュリティー社製の催涙ガス用カートリッジですが、VXガスに詰め替えられています」
「VXガス」
大助がガスの名前をこぼす。すると、SPとAは瞳孔を開いた。
「あっ！」
「何だい、それは」
「有機リン系の神経ガス」
「恐らく、これ一本で数千人を死に至らしめることが」
大統領は一層怒りを露わにして、SPの肩を掴む。
「ふざけるな！さっさと止めるか、ここから出せ！」
「ヒュスク。この部屋のドアを開けられるか」
「外部から物理的なキーで開ける以外、不可能です」
「鍵の所在は」
「情報が、不足しています」