続富豪刑事の護衛(仮) (ページ28)

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車の扉を閉める音が地下駐車場に響く。
車を頭から停めているため、鍵もかかっていないと予想しドアアウトサイドハンドルを引っ張ると、ドアが開いた。
「はは。鍵かけてないとか、不用心だな」
犯罪者を逮捕する場所で犯罪を行っているという罪悪感とスリルを感じながら、Aは武井の車内に細工をしていく。
車内のエアコンのフィルター部分を取り換えるという比較的簡単な作業だけなのだが、思いのほか数が多く、時間を喰ってしまった。
何とか作業を終わらせ、車から降りようとした時だった。
駐車場に足音が鳴り響く。
透かさずサイドミラーでその人物を確認すると、武井の姿を映しだした。
運転席に座っているAは動けずにいた。たとえドアが開けられたとしても、閉めるときに音が出てしまう。武井が来るまでに後部座席に動けられればいいが、武井の車種はスモークガラスになっておらず、動いたらすぐにばれてしまう。
悩んだ末、Aは後部座席に移動することにした。サイドミラーで武井の動向を確認すると、丁度爆発跡を見ている最中だった。
Aは道具の入った鞄を後部座席に投げ、自身も後部座席の足元に急いで隠れた。
暗かった車内がより暗くなり、武井が車の前まで来たことを覚る。
運転席のドアが開き、武井が車に乗り込む。キーを差し込み、エンジンをかける。
Aは鞄からガスマスクを取り出し、素早く装着する。
エンジン音が駐車場に響くと同時に、武井の苦しそうな声と車の揺れが数秒間続いた。
揺れが収まったことを確認したAは、運転席に身を乗り出し、武井が眠ったことを確認する。
しかし、大変なのはここからだ。
まず、運転席のリクライニングを限界まで倒し、武井を後部座席まで引っ張る。次に、武井の体を横にして落ちないようにシートベルトで固定する。最後に、車内の睡眠ガスを全て排出する。
それを全て終わらせたAは、神戸邸まで武井を連れて行くため運転席に身を沈め、車を発進させた。