続富豪刑事の護衛(仮) (ページ25)

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事が動き出したのは、昼下がりだった。
プラグインが先程までとは比べ物にならない波形を生成した。それが意味するものは、加藤が部長に報告したという事だ。
あらかじめ本部に置いておいたSrv-bugを起動させ、加藤の後を追わせる。その様子をイヤホンを装着しながら、スマホの画面で確認する。
すると、加藤は携帯電話を確認しながら屋上へと続く階段を使った。
屋上には仲本が居た。柵に体重を預け、街並みを見渡しながら、いつも持っているサイコロを指先で弄んでいる。
加藤に気付かれないように細心の注意を図りながら、フードの中へSrv-bugを落とす。
『神戸は』
『来てません。連絡もないです』
『井村が死んで今日で三日、休みっぱなしってわけか』
『やっぱり神戸を疑ってるんですか』
すると、足音が聞こえてきた。
『何か用か』
『わりーな、春。長さんと話したくてな』
足音の正体は武井課長だという事がわかった。
「危なかった」
もう少し早く行動していれば良かったかもしれない。そんな考えがAに脳裏を過ったが、間に合っただけよかったと思うべきだろうと自己解決する。
『今回の井村殺しは、あの事件と繋がってる。長さんもそう考えているんでしょう。俺は、十九年前の借りを返したいんです』
しかし、それに対する返事はなく、足音だけが大きくなり、次第に聞こえなくなった。
『俺はかつて長さんの部下だった。そして、いろんなことを学んだ。だがある事件をきっかけに、俺は捜査一課に残り、長さんは出て行った』
『清水部長から聞きました』
『この事件の星をあげることが、俺の、あの人への恩返しなんだ。……井村逮捕のきっかけは、第三者に仕組まれた車の暴走。そして今回も、おそらく同じものの仕業だ。そして、それができるのは――』
Aはイヤホンを外し、捜査一課へ足を運ぶ。