続富豪刑事の護衛(仮) (ページ23)

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帰宅して自室の扉を開けると、体が締めつけられる。
「大助さん、どう――」
「何を話していたんだ」
「清水部長の盗み聞きです。あの話をしていました」
「そうか」
「加藤警部補がいつか連絡してくると思います。めんどくさい返答はしないでくださいね」
「わかってる」
不穏な静けさがAの身体を締め付ける。この空気に耐えきれなくなったAは、手に持っている鞄を足元へ置き、蛇のように巻き付いてきた大助を包む。
「ヒュスク、音楽をかけて」
すると、蓄音機型スピーカーからドビュッシー『第一狂詩曲』が流れ始める。
Aは、クラリネット奏者のブレスと共に話を始める。
「私がいない間に何か進展はありましたか」
「いや、何もない」
「そうですか」
「……A、何か隠してないか」
「何についてですか」
「俺が見ていないことも覚えてるんだろ。あの後どうなったんだ」
「……まだ教えることはできません」
「Aまで俺に隠し事をするのか」
大助は不安な感情を瞳と腕の締め付けで露わにしている。
Aは不安を取り除くように、目線を合わせる。
「”まだ”教えられないだけです」
「そうか」
腑に落ちていないようだが、それ以上何も言ってくることはなかった。