続富豪刑事の護衛(仮) (ページ22)

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仲本が屋上から姿を消した後、Aは葉巻を吸っている大助の方を向く。
「大助さん、先帰ってください」
「何かあるのか」
「清水部長に少し」
「ああ」
吸っていた葉巻を消すと、駐車場へと歩き始める。
「……さあ、部長はどこまで喋るんだろうか」
金属音を響かせながら先を急ぐ。

音を立てないように現対本部の扉を開けると、丁度捜査本部での話をしていた。
『害者は神戸小百合、三十四歳。神戸家の御曹司の嫁さんだ。当時は物盗りと怨恨、両方の線で捜査を進めて行った』
扉の前に立っていると、仲本がその隣に立つ。
「お前……」
「何ですか」
「この事件のこと、どこまで知ってるんだ」
「伯父さんと伯母さん、両親が死んだこと。それだけ。でも、あんたと部長、それにあんたの元部下が関わっている事は知ってる」
「そうか」
扉の向こう側では、茂丸と茂仁、真理恵が死体で発見されたことを話していた。
「なあ。両親のいや、茂仁と真理恵の遺書に何か書いてあったか」
「お前さんの事が、かい」
「そうだ」
「何も」
「そうかよ」
「なら、あの二人はどう死んだ」
「自殺だ」
「そういうことを言ってんじゃない！溺死か、窒息死か。……まず、自殺じゃないんだろ」
「何、言ってる」
「……いや、何でもない。ただ、ひとつだけ。……確固たる証拠があるわけじゃないが、茂仁と真理恵は茂丸の駒に過ぎなかった」
「……どういう事だ」
「“あの人の言う事は絶対だ”と二人は言っていた」
『まあ、そんな具合に僕と長さんは、吹き溜りの現対本部に流れ着いたって訳だ』
清水が話し終わったと同時に、Aは扉を開け、仲本の背中を押す。
「おい」
押した本人は室内には入らず、扉越しにこれからの会話を耳に入れる。
「正直、ここ何年かは手詰まりだった。だがな、あいつらがここへ来て、あの事件が動き出すんじゃ、いや、動き出したんじゃねーかと思った。そして案の定、井村の口封じと、証拠隠滅は繋がっている。神戸家という糸でな」
それを聞いたAは、警視庁を後にする。