続富豪刑事の護衛(仮) (ページ19)

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取り調室から現対本部に戻るまでの間、双方の口が開くことはなかった。
「おい、神戸」
現対本部に通じる非常階段。加藤が二人に声を掛けてきた。
「何で井村を引っ張った」
加藤に向き合うようにして立ち、質問に答える。
「危険運転だ」
「お前の狙いは何だ。事情があるなら言ってくれ。……お前らのやり方は嫌いだが、犯人を捕まえるという一点において、俺はお前らを信じてる」
「首を突っ込むな。査問でそう命じられたはずだ」
加藤は今まで忘れていたのか、息を吸い込んだ。
「場合によっては、警察を辞めてもらうことになる」
「それと。もしプライベートなことでも事情を聞いて来るんですか。お引き取りください」
そうして、二人は階段を後にする。
現対本部の扉の前まで来ると、大助が口を開く。
「荷物を持って来い。一旦帰るぞ」
Aは一瞬困惑したような顔をしたが、素直に返事をする。
室内では、誰かに理由を聞かれることなく退室することができた。

「加藤を追え」
「了解いたしました」
二人は、地下で井村と加藤の様子を追ってる。
「お呼びでしょうか」
「この女に見覚えは」
「いいえ、存じません。御調べでしたらヒュスクに――」
「聞いてみろ」
いつもより強い口調で返答する大助に、鈴江は驚いているようだった。
「ヒュスク、画面に映っている女性について教えて」
「お答えできません。あなたにはその権限がありません」
「もしかして、大助様も」
「ああ」
「私も、極偶にこのように拒否されることはあります。ですがそれは、私の権限が足りないからとばかり」
「どういう時に拒否された。何か法則性や傾向はあるのか」
「さあ。何分、例が少ないので」
すると、大助は立ち上がる。
「行くぞ」
「どこへ」
「警視庁へだ」
そして、歩き始めた。
大助の目的はわからないが、Aは後を追う。