続富豪刑事の護衛(仮) (ページ15)

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『準備はできたか』
インカムから大助の声が聞こえてきた。
「大丈夫です。何時でもいけます」
『被害に対する損害は、その都度二倍の額を賠償しろ』
ヒュスクに話しかける声がする。
その声を聞いたAは、作成した映像をスマホで確認しながら、井村の車が地下駐車場へ入ってくるのをひたすら待つ。
その間に、急ブレーキがかかる場所に血液をぶちまける。
「このAB型の人、こんな事のために献血を行ったわけじゃないのにな。なんかすみません」
一応この人には何か送ってあげよう等と考えていると、インカムからサイレンの音が聞こえる。
駐車場の入り口で急カーブを高速で曲がる車の音と、スマホの映像が駐車場に入って来た事を知らせる。
Aはスマホを足元の鞄に仕舞い、普段より安いジャケットを着る。
最後の角を曲がり、井村の車が目の前までやって来た。
――よし。と覚悟を決め、歩きはじめる。
急ブレーキの音と共に血糊の上に寝そべる。
不愉快な感触と生温さが体に纏わり付く。
逮捕後の片付けがめんどくさいや、血液の匂いが気になるなど、どうでも良い事を考えながら、車から降りてくる大助を待つ。
「井村和子だな。危険運転及び傷害致死の容疑で逮捕する」
「違うんです。私じゃありません。私は何も」
一瞬こちらを見た大助は、苦しそうな顔をしたのち、また井村を見る。
「……救急車を、早く！」
「必要ない、即死だ。車から出ろ」
シートベルトを外した音とヒールの音がAの耳へ届く。
Srv-bugが車から飛び立ったのを確認し、井村がこちらの様子を窺っていないことがわかった。
念のため、大助の車が出発するまでは血溜まりの中に居ることにした。