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「俺と付き合ってください」
そう言って、初めて同じクラスになって早々私に頭を下げた人。
数日後の今日、ソイツは隣の席で昼寝をしている。
そして、そこらへんの女子たちが"やばい"だの"カッコイイ"だの騒いでいる。
イヤホンでも持ってくればよかったなあ。本、読みたいのに。
『…うるさい…』
ボソッと文句を言う。
でも、端っこで本を読んでる黒縁メガネの声なんて誰にも聞こえない。
諦めて本に集中しようとすると。
「…ん、Aちゃんなんか言った？」
はあ。貴方に対しての大きな声は聞こえず、私の小言は耳に入るんですか。
『いいえ』
「うるさいよね」
どっちも聞こえていたらしい。
ソイツは、キャーキャー言っている女子軍に話しかけた。
「あのー、もうちょい静かにしてもらっていいすか」
途端に静まる教室。
女子は"こっち見た！"と興奮気味だけど。
「よっこいしょ」
大袈裟に腰を下ろして、私を見る。
いちいちこっちに綺麗な顔を向けなくていいと思う。もっと喜ぶ女子が居るだろうに。
「本、何読んでるの」
『…』
「なあによんでるの」
『答えなきゃ駄目なんですかね』
「別にいいけど、俺が静かにしてってお願いしたんだよね」
『…チョコレートコスモス』
「へー。どんな話？」
『自分で読んで』
「ふはは、つめてえ。笑」
勝手に楽しそうに笑われても。
女子からの"なんでアンタが目黒くんと話してるの"という視線を感じる。
『…あの、お断りしたはずなんですけど』
「普通に隣の人と話してるだけ」
『はあ…』
ああ、周りの視線が痛い。
違うんです違うんです。コイツが一方的に話しかけてきてるだけで、私は望んでもいなくって…。
嫉妬の目に耐え切れそうになくて、ダレカタスケテェ、と心で呟いてみると。
「うぇいA！」
救世主、現る。
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作者名：MooN | 作成日時：2022年1月31日 20時
