僕が君の傘になろう。

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俺は、Aちゃんのちっこい肩にもたれかかって、
眠りこけとって。


幸せな気分やったわけや。


はっとした俺を、
Aちゃんは、
子供見るような目で見てる。


その頬には、涙の跡。


エンドロールに流れてるのは、
切なくて、甘い、メロディーで、
胸がきゅっとなる。


そんなに感動的な映画やってんな。

ああ、大失態や。






映画の後で入った、
行きつけの近所のラーメン屋。

Aちゃんがどうしても、
俺がいつも行ってる店がええ言うから、
連れて来たけど、
こんな油ぎった店で良かったんかな。


注文した冷やし中華を待ってる間。


『ちゃうねん。
昨日、徹夜して。
映画、おもろくなかったとか、
そんなんちゃうねん』


また失言。


『どうして徹夜なんかしたんですか？』


Aちゃんの返事がもどかしいて、
悶々としてた、なんて、
言われへんやろ。


『どんな映画やった？
あの俳優、好きなん？』


話、変えよ、て、安直に考えたけど。


『割と好きです』


その答えに、またショック受けてる。


俺とは真逆なタイプやねんもん。

知らんとる間に、ちょっと拗ねた顔してたんかも。


『本当はそうでもないです』


Aちゃんが、言い訳みたいに書いてくれた。


『今日の主任、なんかいつもと違います』


『どう違うん？』


『なんか子供みたいです』


『これがほんまの俺やで。
仕事では出来るフリしてるねん。
実は大した度の入ってへんメガネかけて』


そう書いたら、
Aちゃん、ぷっと吹き出した。

声はたててないねんけど、
俺にはちゃんと分かってん。


『完璧とは程遠い男やで。
どっちかいうたら、あかんたれの部類やで。
幻滅した？』


『いえ。』


書きかけたのに、
Aちゃん、そこでやめてもうてんな。

でも続きなんか、分かったし。


顔、真っ赤っかやねんもん。


『やからさ。
俺には自分は相応しくないとか、
なんも思わんでええねんて』


「な？」


最後は、たたみかけるように言うて、
思わず、ぎゅっと手を繋いだ時、

店長のマルがニヤニヤしながら、
冷やし中華、運んできた。

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