雨の音。１ ページ1
Aside
雨の日は嫌い。
気分は落ち込むし、偏頭痛はするし。
なにより、１７年前の、
あの雨に煙った夕闇が蘇るから。
昼休み、一人でサンドイッチを食べた後。
倉庫の隅で、携帯を開いて、ため息をつく。
まただ。
これで４度目。
いや、学生時代を含めると、５度目だったっけ。
高橋まさか本気にしちゃった?悪い悪い。そんなつもりなかったんだけど。次なんてねーから。
男の人に騙されるのには、慣れてる。
耳の聴こえない、
愛情に飢えた、こんな女、
誰も相手にするわけもないのに、
どうして、優しくされると、
今度こそは幸せになれる、って信じてしまうんだろう。
Aそうですよね。すいませんでした。今後も仕事上でのお付き合い、今まで通りお願いします。
送信を打ってから、
携帯をポケットにしまって、
事務服の左ポケットを探る。
中に入ってるのは、ビーズの指輪。
あの雨の夕方、
１１歳の私を置いて、男の人と出て行った、
お母さんが私にくれた、最後のお誕生日のプレゼント。
降り続ける雨の中、
お母さんは、
ビーズの指輪を、
手のひらに握らせながら、
「A、幸せになってね。
この指輪はお母さんが作ったの。
Aをきっと守ってくれる」
もうほとんど耳の聞こえなくなってた私に、
そう言った。
雨の音とその声は、混ざり合って、
お母さんが、本当にそう言ったのか、
今となっては分からない。
私が病気になんてならなければ。
私の耳が今もきちんと機能して、
聴こえていたなら。
両親はあんなに罵り合ったり、
お互いを責め合ったりしないで、
きっとお母さんは、
私と父を置いて、出て行ったりしなかった。
薄暗い倉庫の小さな窓の外では、
今日も小雨が降り続いてる。
薄桃色のビーズの指輪を透かしてみたけど、
くすんだまんまで、
頭の痛みがより強くなっただけだった。
車の窓を開けて、
「美里ちゃん、早くしてよ」
お母さんを呼んだ、若い男の人。
まだ幼い弟だけを抱いて、
その車に駆け寄って行った、
お母さんの真っ赤なワンピースが、
雨の中で翻った。
その時、お腹に経験したことのない痛みが走って・・・
私はその瞬間に、初潮を迎えたんだ。
もう大人だから
一人で生きていきなさいと、
宣告された。
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りょーくんえいたー(プロフ) - いつも更新ありがとうございまーす！ やっとコメントができて…。ずっと読んでたんですけどね。ごめんなさい。 次回も楽しみにしてます！ (2019年8月12日 15時) (
レス) id: 0630fea27c (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - いつも更新ありがとうございます！気になるところで終わってしまって、続きが気になります〜！以前から感じてましたが、登場人物(ここではヤンマー)の話す関西弁が甘くてすごく好きです！foolさんの使う言葉、キュンキュンします(*/∀＼*) (2019年8月10日 21時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
美穂(プロフ) - いい所で終わる〜foolさんに、めっちゃ焦らされてる感！続きが気になる〜 (2019年8月10日 3時) (レス) id: 12d2944919 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - はじめまして！いつも楽しく読んでます。毎回更新のたびに焦れったくて、でも亮ちゃんが可愛くて！とりあえず最高です！とお伝えしてくてコメントしました！更新楽しみにしてます！ (2019年8月10日 1時) (レス) id: da9e08fb91 (このIDを非表示/違反報告)
美穂(プロフ) - 新作始まってからの大量更新めっちゃ嬉しいです (2019年8月8日 23時) (レス) id: 12d2944919 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年7月27日 18時
