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誠「真ん中行ったら綺麗やで。
ほら、細道あるやろ」
「あ、本当だ」
誠「行ってみる？」
「うん、」
頷いたら優しく目を細めて歩き出す誠也くんの、少し後ろをついていく。
ずっと、胸がドキドキ言うてる。
真ん中に行くのがちょっと怖くて、足が竦みそう。
やけど、誠也くんの手があったかいから。
見慣れた後ろ姿が「大丈夫」って言うてるみたいやから。
ぎゅっと手を握りしめたら、同じぐらいぎゅって握り返してくれる。
誠也くん、
ねぇ、誠也くん。
やっぱり、私、
誠「ほんま満開やな、ぜーんぶ咲いてるやん」
「うん、」
溺れそうなぐらいの秋桜に囲まれて
夕陽に照らされた誠也くんの横顔を見る。
鼻筋が高くて、唇の輪郭が綺麗で、
影が差すと儚く見える。
私の知ってる誠也くんの顔。
誠「A、」
「はい、」
そっと手を離してこっちを振り向いた誠也くんと向き合う。
まっすぐな瞳と、目が合う。
どうしよう。
まだ何にも言われてないのに、もう泣きそうなの。
私を見て、誠也くんは困ったように笑った。
誠「……ずっと、大事な妹みたいな存在やって思ってた。
守ったらな、助けたらなって思ってた。
けど、ほんまはAに助けられてたんは俺の方で、
隣におってくれて、
笑ってくれて、
背中を押してくれて。
いつの間にか、傍におってほしい人に変わってた。
そんで、俺が幸せにしたい人にもなった」
視界がうるっと滲む。
やけど、今は目を離したくない。
緩やかに吹いてた風が止む。
誠「阿立Aさん、好きです。
俺とお付き合いしてください」
深く頭をさげて、差し出された右手はちょっとだけ震えてた。
チャラそうやけどほんまは律儀で
怖そうに見えてすごく優しくて
こんな時は意外とキザに決めへんまっすぐな人。
私の知ってる誠也くん。
私が大好きな、誠也くん。
この人に、ずっとついて行きたいから。
「……、よろしくお願いします」
手を重ねたら、誠也くんの顔があがって。
何も言わず優しく微笑んで
そのまま抱き寄せられた。
香水の匂いがするジャケットに顔を埋める。
誠「ありがと、A」
「私も、ありがとう。
ずっとずっと前から、誠也くんのこと大好きやったよ」
誠「うん、これからも好きでおって」
「うん。
誠也くんもね、」
誠「当たり前やん、……ずっと幸せにしたるわ」
背中に回った腕が苦しくて、だけど嬉しい。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年11月4日 1時
