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誠「よし、これでお土産は全部やな」
「ありがとう誠也くん、『こじけん禁止令』解いてくれて(笑)」
誠「今だけな、こっからまた禁止やから(笑)」
自分でも言うてておかしいみたいで笑ってる誠也くんにつられて私も笑う。
私はエリーちゃんとこじけん、大晴くんに。
誠也くんはリチャードさんと、演劇部の皆さんにも買ってくって
おっきなクッキーの箱を買って。
ほんまに演劇部のこと大好きなんやなぁって
誠也くんの大好きが伝わって勝手に嬉しい。
誠「え、なにニヤニヤしてん」
「ううん、なんでもない」
誠「気になるやん、Aのなんでもないは『なんかある』ってことやし。
ほら、ちゃんと言わな今度こそするで？」
「なにを？」
誠「ちゅー」
「そ、れは、」
さっきの反省を活かして必死に返す言葉を考えるけど
結局いいのは浮かばなくて。
「せ……誠也くんが、したいなら、いいよ」
覚悟して、正直にそう言ったら
目が合った誠也くんが「え、」って固まった。
あ、やっぱりだめだった、かも。
瞬きすらしてくれない誠也くんにどんどん血の気が引いてく。
ど、どうしようこんな時なんて言えば、
誠「……そんなん、ズルいって」
「んっ、……」
誠也くんの顔が急に近づいて、一瞬、唇に何かが当たって。
離れてく誠也くんがスローモーションみたいに見える。
え、なに？
今のなに？
誠「……なんか言うてや」
「な、な、な、」
誠「ふふ、お口パクパクしてんで(笑)」
言葉が出てこなくてあわあわしてる顎に手が添えられて
きゅっと目線が上がる。
誠「ごめん、」
「え、」
誠「我慢できひんかった」
微笑んでるのに、真面目な瞳でそんなこと言うから
もう、頭が真っ白になってもうて。
誠「行こ、次の場所」
「……うん、」
手を引かれるままに遊園地を出て、
車の助手席に乗って、
何か話した気がするけど、何も話してないかもしれへん。
ただ、『赤いスイートピー』が流れてたことだけは覚えてて、
気づいたら車は目的地についてた。
誠「A、手、繋ご」
助手席から降りたら
差し出された手をドキドキしながら取る。
お日様が傾いて陰になった小高い丘を少し登ったら、
急に周りがピンク色に染まった。
「うわぁ……、綺麗……」
ピンクと赤、白のコスモスがどこまでも広がってて
まるで絨毯みたいに見える。
満開に咲き誇ってる秋桜畑なのに、
今は誰もいなくて、誠也くんと2人きり。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年11月4日 1時
