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忘れ物がないか確かめて、ちらっと振り返ってみたら
正門はベッドでスマホを見てたから、ほっとしてバッグを閉める。
「じゃあ、私帰るね」
良「……もしかして、大晴やったりして」
「え、」
良「今から会うの」
反射的に身体が固まったのを見逃さなかった正門が
「当たりか」って意地悪に微笑む。
顔を合わせづらくて背を向けたら
ベッドの軋む音がして
「結城」って名前を呼ばれる。
悪いことはしてないのに
怒られる前の子どもみたいな気持ちで振り返ったら
目の前の立った正門は私を見て、困ったように眉をさげた。
良「なによ、その顔(笑)」
「なん、だろうね、」
良「大晴と遊ぶんやったら俺の分までお祝いしといてって
頼もうとしただけなのに」
「お祝い？」
良「え、結城知らへんの？」
首を傾げた私に、正門は少しだけ驚いたように目を瞬いて、
良「大晴、今日誕生日やで」
「……え？」
大晴くん、誕生日なの？
今日？
どうしよう、全然知らなかった。
「何も用意してない……」
良「あはは(笑)律儀やなぁ、相変わらず。
一緒にお出かけするんやから、そん時買ってあげればえぇやん」
頭を撫でられながら
大晴くんの好きなものを考えてみるけど
何でも喜んでくれそうなかわいい笑顔しか浮かばなくて
プレゼントのアイディアが浮かんでこない。
「……どうしよう、」
良「結城」
「なに、んっ、あ、」
急に抱き寄せられたと思ったら
鎖骨に焼けるような痛みが走って肩が震える。
ぢゅ、って音を立てて唇を離した正門が
にやりと笑ってそこを撫でる。
良「ん、綺麗についてる」
「正門……！なんで、」
良「なんでやろな。ワンポイントほしいなって思ったからちゃう？」
ぎりぎり自分では見えないところにつけられたソレを
満足げに触るから
なんかもう、分からなくなって、
「……そういう正門は、あまり好きじゃない」
触れている指先を払って
そのまま逃げるように部屋から出た。
階段を駆け下りながら時計を見たら、
もう色々諦めないと間に合わない時間になってて。
「はぁ……、」
正門のつけた痕をシャツで隠しながら
アパートを出る。
薄手のブラウスにしようかな、なんて
考えてたコーディネートは白紙になって
多分髪の毛も綺麗にする時間はなくて、
せめてシャワー浴びたいとか色々、色々考えてたら
気持ちが収まらなくなって
誰もいない道を、気づいたら走り出してた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年11月4日 1時
