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胸元でヴヴ、と振動を感じて目が覚めた。
「んん、なに……」
あぁ、正門を起こさないように
バイブレーションにしてたんだっけ……。
寝る前の行動をぼんやりと思い出しながら
身体を起こして目覚ましを止めたら
少し寝過ごしたみたいで
時刻は8時30分を少し過ぎてた。
「あらら……」
これは、のんびりメークしてる時間はなさそう。
垂れてくる髪の毛を避けながら隣を見たら、
小さくまるまって寝ている正門の口の端がむにゃむにゃしててかわいい。
昨日より顔色はよくなってるみたいだけど
ぬるくなった熱冷ましシートを剥がして
一応、おでこを触ってみる。
「……よかった。熱さがってる」
ぺたりとした髪の毛をそっと撫でたら
また、口の端をくすぐったそうに動かすから
起こさないようにベッドから降りた。
顔だけ洗わせてもらおうって
私が置いていったままだった洗顔フォームとタオルを借りて
さっぱりしたら
思ったより自分の肌艶がよくてちょっと不思議。
昨日の夜、繋がれてない方の手でなんとか
メーク落としシートしただけだったのに。
女性ホルモンが分泌されてたとか？
なんて、
「……色っぽいことなんて、もっとしてるくせにね」
皮肉っぽくそう呟いたら
鏡の中の私は擦れた笑みを浮かべてた。
あぁ、だめだめ。
大晴くんにはとても見せられない顔を
タオルで拭きながら廊下に出たら、
ドンッ、
「うわ、」
良「おぉ、ビックリしたぁ」
寝ぐせをつけた正門が目を丸くしてる。
「ごめん、」
良「前見て歩きや？ケガするで」
「うん。正門はもう平気？」
良「さっき目ぇ覚めて測ったら平熱戻ってたし、だいぶ楽になった。
結城のおかげやな。
ありがと」
そう言って、いつものぽやっとした笑顔で頭を撫でられる。
良「タオルの場所分かった？」
「うん、前と変わってなかったから。勝手に借りてごめんね」
良「えぇよ、結城なら勝手にしても」
手のひらの熱が心地よくて頭を傾けたら、
正門とふいに目が合う。
良「……正直、帰ったと思うてた」
「……そうだよね、」
良「なんでおってくれたん？」
「正門が『隣にいてほしい』って言ったから、」
良「やから、おってくれたん？」
「うん、」
じれったいような沈黙と、
とろりとした正門の視線が気まずくて爪先に力が入る。
あ、これはマズいかもって思った瞬間、
壁に身体を押しつけられて、正門の腕の間に挟まれてた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年11月4日 1時
