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「……部活関係の、悩みごととか？」
余計なお世話かも知れないけど、心配でつい口に出る。
良「まぁ、それもあるやろな。
学祭公演終わったら部長とセク長引き継ぎやし、
オリバーのこともあるし。
あとは進路とか、
……まぁ色々、」
「……ごめん。
私は役員からも外してもらったし、
本当はオリバーのことも、脚本だし関わらなきゃいけないんだけど」
自分から口を出したクセに
正門の言ったことにはまったく力になれそうになくて
情けなくて聞いた自分が恥ずかしくなる。
良「えぇんよ。
結城は辞めずに楽しく脚本書いてくれてたら、それだけでえぇから」
「でも、」
良「誰より結城の脚本ファンしてる俺が部長やるんやから、えぇの。
その辺のわがままは言わせてもらわな役損やしな？」
熱冷ましを貼った顔で「な？」って上目遣いに見つめられて、
何も言葉を返せなくて鍋の火を弱める。
「……正門って、優しいよね」
良「そう？よぉ言われる(笑)」
「優しすぎるけど、でも、勘違いはしない」
良「勘違い？どういう？」
「……恋人に向ける優しさとは違うんだろうなって、そういう理解」
小皿に分けたおかゆを味見したら、少し味が薄くて
醤油を足してたら
背中に急に熱を感じた。
お腹に回る腕が強く抱きしめてきて、息が止まりかける。
良「こういうこと、普通にするのに勘違いせぇへんの？」
耳元で囁く声が狙ったように甘くて、
だけど、ドキドキは高鳴ってく。
「正門、火がついてるから、」
良「なら、これでえぇ？」
片手で火を消したら
まさぐるように髪の毛を分けて
首筋に吸い付いてくる正門の唇。
ちゅ、ってわざと音を立ててキスするのは
私がそういう音に弱いことを知ってるからで。
いつもより熱い舌がざらりと下から上に這ったら
熱が移ったみたいに息が上気してくる。
「正門、今は、だめ、」
良「そう？案外汗かいたら治ったりして」
「……最後まで、してくれないクセに」
つい、口から出た言葉に
自分で気まずくて息が止まった。
正門のキスが止む。
ドクドク鳴る音が、耳の裏ではっきり聞こえる。
「……ごめん正門。その、」
良「美味そうなおかゆやな。
冷めへんうちにはよ食べよ。あ、結城も食べる？」
「あ、……うん、」
あからさまに話をすり替えて離れてく正門に
伸ばした腕はすり抜けて。
鼻歌交じりでお鍋を置く音を聞きながら
1つ、息を吐いた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年11月4日 1時
