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セットした前髪に指が通って、少し崩される。
指がおでこに当たるか当たらないかの感触が、ぞわぞわする。
力を入れて閉じてるから
ぴくぴくする眦に、正門先輩の指が掠った。
良「……ほんま、かわえぇなぁ」
いつもより低く呟くような声に、鼓膜が蕩けそうになった。
ガチャ、
健「お疲れ様でぇす！」
大「でぇす！え、あん子だれ？」
健「え、あれ？
は、エリー！？」
大「えぇぇぇっ！？」
バタバタ走り寄ってくるこじけんくんと大晴くん。
正門先輩の指先は
逃げるように離れていって。
大「え、めっちゃかわいなってる！！
どうしたん！？」
健「エリー、大丈夫か！」
「だ、大丈夫だよ？
決して馬子にも衣裳、なんてことにはなってない、はず」
こじけんくんに肩を揺さぶられながら
正門先輩の方を見たら、
いつの間にか座ってる結城先輩と織部先輩とお話してて。
目を合わせて笑ってる結城先輩と正門先輩は
やっぱり、絵になってる。
健「エリー、やっぱ化けたな」
大「おん、まさかここまで変わるとは」
「ねぇ、大晴くん」
うんうんって頷いてる大晴くんを下から覗き込む。
「結城先輩と、お話しに行きましょう」
大「え、話ってなんか用あるん？」
「ないけど行こう」
大「え、ちょっと待ってや、えぇ！」
大晴くんの腕を引っ張って
正門先輩の机の前まで連れてく。
織「あれ、大晴とエリーちゃんどうかしたの？」
「大晴くんが、結城先輩に御用があると」
結「え、私に？
どうかしたの大晴くん」
大「え、ただ俺はエリーに引っ張られて」
健「あー、あれっすわ。
金曜に2人出かけるんでしょ？
どこ行きたいですかーってアンケート」
織「へぇぇ、2人で出かけるんだ？
ようやくか、」
健「そうなんすよ(笑)」
こじけんくんの絶妙なアシストが入って
織部先輩が話に乗っかってくれる。
結「そっか、そう言えば特に話してなかったもんね。
どうしようか」
大「えっと、俺なんも考えてへんくて」
いきなり話が飛んできて困ってる大晴くんがあたふたしてる。
良「あれ、金曜って確か、
台風一番近いっていう日ちゃうかったっけ？」
大「え、まじっすか」
慌ててスマホを確認し始める大晴くんと
「本当？」って正門先輩を見上げる結城先輩。
良「まだ、予報やけどな」
そう言って結城先輩を見下ろす正門先輩。
うーん、まだ入れない。
この2人の間には、まだ届かない。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月22日 2時
