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誠「……で、お姫様抱っこして大喜びしてたんが
この脚本の完成、と」
誠也くん、声は真面目ぶってるけど
目がニヤついてるって。
音もなく入ってきた誠也くんのせいで
ユキさんとの甘い時間は一瞬で吹き飛んで、
顔真っ赤にしてるユキさんと隣に並んで
誠也くんから脚本のチェックを受けてる。
誠「ま、脚本って毎回思うけど
孤独な戦いなとこあるし、今回は特に大変やったしな。
分かるわ、その喜びようも。
……ほんま頑張ったな、2人とも」
そう言ってユキさんと俺の頭をわしゃわしゃ撫でる誠也くん。
嬉しいけど、ちょっと痛い。
誠「ほんなら読ませてもらうわ。
そんで明日には結論伝える。
役員とセクション長に先回すけどえぇか」
結「はい、お願いします」
ユキさんと揃って頭をさげたら、
「おう」と上から短く返事が聞こえた。
なんか、ドキドキする。
自分らが一生懸命作ったものを
他の人に審査される感覚。
最高や！って、おもろい！って
自分では思って書いてるけど
他の人にそれが伝わるかは別の話で、
もし、おもんないって言われたら。
ユキさんがいつも抱えてたプレッシャーが、
今の俺ならよう分かる。
誠「ふっ。そんな泣きそうな顔するなって大晴」
唇を噛みしめてる俺を見た誠也くんが小さく笑った。
誠「自信持て。
誰になんて酷評されたって
自分がその芝居で何を伝えたいか、
脚本家がそこブラしたらあかんやろ。
自分のつくった世界に、
一言一句にこだわれ」
自分のつくった世界、
一言一句まで。
そうやんな、
ユキさんと夜遅くまで、語尾とか言い回しとか
細かいことまで話し合って何度も削っては書きなおした。
その何百回の繰り返しがこの話に詰め込まれてるから。
結「大丈夫、大晴くん。
通るよ」
俺の方を向いたユキさんの表情は、笑ってた。
そんで、俺も。
「そうっすね、……自信あります。
皆が胸張って背負るような話になるって」
にやりと、口角があがってた。
誠「……なんか、お前ら似てきたな。
その不敵なぐらいキラキラした笑い方」
結「え、そんな表情してますか？」
誠「自覚ないんか、あくどいな(笑)」
結「え、」
顔を見合わせる俺らには、まったく自覚はないけど。
誠「ところでこの話、表紙ないけど
題名どうするん？」
結「あ、考えてます。
題名はですね……、
「「『ドローリング。』です」」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月22日 2時
